國體護持總論
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國際系としてのポツダム緊急敕令

ところで、このやうな議論は、占領政策全般の要諦となつた『ポツダム緊急敕令』(昭和二十年敕令第五百四十二號『ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ發スル命令ニ關スル件』)を「國内系」に限定して考察したことになるものであるが、前にも觸れたが、これを國際系に屬するものと見ることができるといふことである。

再び、行爲規範と評價規範の話に戻すが、帝國憲法第七十六條第一項により、行爲規範において帝國憲法の改正法としては無效な占領憲法が、評價規範によつて講和條約(東京條約、占領憲法條約)の限度で成立したと認められるとして轉換したのと同樣、このポツダム緊急敕令は、形式としては帝國憲法第八條の手續による國内系の規範であり、國内系の規範としては無效ではあるが、これが帝國憲法第十三條の講和大權の行使として、このポツダム緊急敕令とこれに基づく一連のポツダム命令も講和條約群、いはば「敕令條約群」として評價しうることになる。

つまり、後で詳しく講和條約説の説明を行ふが、占領憲法とポツダム緊急敕令とは相似してをり、いづれも國内系の規範としては無效であり認められないが、國際系の講和條約として評價されるといふことになる。そして、このポツダム緊急敕令等(敕令條約群)は、「入口條約」に屬するものといふ位置づけになる。

しかし、占領憲法(東京條約、占領憲法條約)と決定的に異なる點は、『ポツダム宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件の廢止に關する法律』(昭和二十七年法律第八十一號)などによつて、ポツダム緊急敕令等(敕令條約群)だけは、すべて獨立時に廢止されたといふ點である。

この廢止は、我が國が單獨で決定したものではなく、GHQとの合意により行はれた。後に觸れるとほり、これも交換公文と同樣に、「英文官報」に掲載されてGHQの承認を得たことなどから、この「廢止」の實質的な性質は、入口條約の一部を形成してゐた敕令條約群の「合意による破棄」といふことになる。

そして、殘された入口條約、中間條約(東京條約、占領憲法條約)及び桑港條約の講和條約群は未だに存續してゐることになる。

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