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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第三十八回 日弁連の正体

てをつかね ひざをかがめて うけいれし あだのてしたを うちてしやめぬ
(手を束ね膝を屈めて受け入れし仇(GHQ)の手下を討ちてし止めぬ)


弁護士といふ職業は、日弁連に加入し、いづれかの弁護士会に所属しなければ、弁護士としての仕事をすることができないといふ強制加入制度なので、仕方なく日弁連に加入し全国のいづれかの弁護士会に所属することを余儀なくされてゐます。占領憲法が保障する集会結社の自由や職業選択の自由がないのが弁護士といふ職業なのです。


日弁連や弁護士会は、GHQの軍事占領下の非独立時代にGHQの意向によつて制定された弁護士法といふ法律によつて既得権益が守られ、弁護士自治といふ名の下に、適正手続の保障のない糾問構造の懲戒手続制度を悪用して、日弁連や弁護士会の言動に反抗する弁護士を抹殺してきた長い歴史があります。


私は、弁護士登録をして以来、日弁連と私の所属する京都弁護士会の思想的偏向をずつと批判してきたことから、その報復として、陰湿で出鱈目な手続と審理で懲戒処分等の不当な処分を受け続けてきました。


そこで、私は、自分のことだけでなく、弁護士のサイレントマジョリティを代弁して、平成27年7月1日に、日弁連と私の所属する京都弁護士会などを被告として、一人だけで訴訟を提起しました。それは、この度の安保法制が立憲主義違反などと称して、あからさまに野党と共闘して政治運動を大々的に展開したことは目に余る違憲・違法であることを明らかにするための訴訟です。


 このことについては、提訴当日に記者会見を開きましたが、報道したのは産経新聞のみでした。メディアの殆どは日弁連が政治行動をすることに何の疑問も抱かないといふ情況なのです。しかし、私の支援者を通じてネット上で公開してゐる訴状や意見陳述書及びこれまでの準備書面で詳しく述べてゐますので、それを是非ともご覧になつてください。


私の元には、全国の弁護士から、多くの激励のメッセージが届いてゐます。その中には、日弁連の副会長経験者や全国の弁護士会の会長経験者なども居ます。これまで、日弁連や弁護士会が弁護士法で限定的に定められてゐる「目的」の範囲を逸脱し、政治的中立性を守らずに目的外行為である政治運動に加担したことの罪悪感から、名前の公表は避けてほしいが、私の訴訟を応援したいといふ趣旨のものでした。


しかし、それ以外の中に、興味深い応援のメッセージを送つてくれた弁護士が居ました。名前は伏せますが、そのメッセージの趣旨は、個人的には安保法制には絶対反対であるが、強制加入の日弁連や弁護士会が反対声明を出したり、野党と共闘して政治的活動をした今回の安保法制反対の政治的運動にも絶対に反対であるといふ意見でした。私は、これによつて、左翼的弁護士の中にも、法曹としての良心を持つてゐる人が少なからず居ることを再認識したのです。


ヴォルテールは、「私はあなたの意見には反対だ、だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る。」と言ひましたが、この弁護士は、ヴォルテールの論理を体現した「左翼の鑑」と言へます。


これまでの左翼思想は、共産主義が中心でしたが、現在では、個人主義とか、いはゆるリベラル派も含めたもので、左翼思想のハイブリッド化が進んでゐます。自分は左翼だと思つてゐなくても無自覚な左翼も居るのです。


ただ、このやうな左翼思想にこれまで共通した特徴がありました。それは、論理思考を重視し、論理に忠実であることを誇りにしてゐたことです。そして、左翼思想こそが論理思考の帰結であり、合理的であると信じてゐたのです。現に、私の知つてゐる左翼の人たちの中には、論理思考からすれば、占領憲法は憲法としては無効であると帰結する人も多いのです。


ところが、そのやうに判断したとしても、これまで素晴らしい憲法だと賞賛してきた手前、これを論理的に無効だと主張することは、同じ左翼仲間から排斥されて生きて行けなくなるので、そのことを公表できないのです。論理を尊重すると言ふのも、保身のため方便であり、ときには無視することもあるといふ御都合主義が多いのです。


このことは左翼に限つたことではありません。全ての政党や言論人に共通することですが、自分たちに都合のよい部分だけを切り取つて、その部分だけの限定的な議論に留め、お互ひに、それ以外の深刻な問題点には触れないといふ馴れ合ひ合意をしてゐるといふ御都合主義に支配されてゐます。


 憲法論においても、御都合主義により、限定的な議論に留め、それを議論する双方が暗黙に合意にしてゐるといふ一例としては、イラク特措法の審議の場合がありました。


派遣される自衛隊の装備に関して、武器の種類と性能、さらには武器使用制限などについての議論はしてゐましたが、そもそも「武器の使用」と、占領憲法第9条第1項が禁止する「武力の行使」との区別も出来てゐないといふお粗末なものであつたことはさておき、武装した自衛隊が他国の領域に駐留することは、同じく同項で禁止する「武力による威嚇」に該当するのではないかといふ議論はされなかつたのです。私がこの問題点の示唆を与へた、ある民主党代議士が特別委員会においてこれを指摘しましたが、政府答弁は余りにもお粗末なものでした。この問題点は、共産党や社民党が直ぐにでも飛びついてもよいものなのに、どこの党もこれを重要問題であるとして議論せずに黙殺してしまつたのです。つまり、与党も野党もこれには触れないといふ暗黙の合意による出来レースだつたのです。特別委員会議事録が残つてゐますので確認して見て下さい。


このやうなことは、左翼集団によつて乗つ取られてゐる今の日弁連や弁護士会の組織的な体質にも投影されてゐます。

もし、安保法制が立憲主義違反だと厳格な立場で主張するのであれば、それ以前に、軍隊であることが明らかな自衛隊は違憲であると当然に主張しなければなりません。それどころか、憲政史上最大の立憲主義違反行為であり、法的安定性や法の支配を完全に踏みにじつたものが占領憲法の制定は無効であるとことを真つ先に指摘しなければならないのですが、これは絶対にしないのです。


これまでの日弁連に対する訴訟において、平成4年12月21日に言渡された平成4年(ネ)第500号事件判決(被控訴人・日弁連)では、「法人は、本来その定められた目的の範囲内で行為能力を有するものであり、その活動は目的によって拘束されるものである。特に、被控訴人のような強制加入の法人の場合においては、弁護士である限り脱退の自由がないのであり、法人の活動が、直接あるいは間接に会員である弁護士個人に利害、影響を及ぼすことがあることを考えるならば、個々の会員の権利を保護する必要からも、法人としての行動はその目的によつて拘束され、たとえ多数による意思決定をもってしても、目的を逸脱した行為に出ることはできないものであり、公的法人であることも考えると、特に特定の政治的な主義、主張や目的に出たり、中立性、公正を損うような活動をすることは許されないものというべきである。」と判示してゐます。


また、弁護士と同様に強制加入の団体である税理士会に関して、平成8年3月19日の最高裁判所第三小法廷判決(民集50巻3号615頁)によれば、「税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員を寄付することは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法49条2項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為」であると認定してゐるのです。


それにもかかはらず、日弁連や弁護士会が確信犯的に政治的言動を繰り返すことは到底許されることではありません。


日弁連や弁護士会は、最高裁判例をも無視して政治的活動を繰り返す、まさに反社会的団体であり、憲法違反の団体です。それゆゑに、一刻も早く、このやうな強制加入の日弁連や弁護士会を「解体」させる必要があり、その一里塚として、私はこれからも繰り返されるであらう日弁連と京都弁護士会による今後の報復的な懲戒処分がなされることの覚悟を決めた上で、一人で今回の訴訟を提起したといふ次第です。

南出喜久治(平成27年11月1日記す)


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