自立再生政策提言

トップページ > 自立再生論02目次 > R04.08.05 第二百二回 反ワクチン・反マスク訴訟 その十二

各種論文

前の論文へ | 目 次 | 次の論文へ

連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第二百二回 反ワクチン・反マスク訴訟 その十二

くすりには くすしちからを そなへども いまはさはりの ものとまがへり
(薬には奇し力を備へども今(現代)は障りの物(毒物)と紛へり)


東京地裁の反ワクチン訴訟の判決が8月2日午前11時30分にあり、結果は全部敗訴でした。判決の主文は、当事者訴訟の請求についてはすべて訴を却下し、損害賠償請求については請求棄却するといふものでした。


この判決が言ひ渡されて3日間が経ちましたので、なるべく早く報告させていただくため、いつもの定期掲載よりも少し早く掲載することにしました。


それにしても、これまでお知らせしてきたとほり、最後の最後までこの春名茂裁判長の東京地裁民事第2部は、上層部の権力の顔色を見て保身をはかることしかしない典型的なヒラメ裁判官たちでした。


この日の午前中は、いつもと同じやうに、東京地裁ではこの裁判のために特別警備体制がとられ、事件関係者以外の一般人の立入は禁止され、この事件の当事者と代理人は別として、この事件の傍聴券所持者以外の者は東京地裁の庁舎に立ち入ることはできません。それなのに、傍聴券交付については、開廷の2時間前の午前9時30分までに正門前に集合しなればならないと、春名裁判長が決めました。どうして2時間前に集合しなければならないのでせうか。この裁判1件しかないのであれば、30分前でも充分なはずです。


開廷の10分前に、531号法廷に入りましたが、傍聴席は60余りで満席でした。この裁判しかないのであれば、もつと傍聴者が入れる大法廷でもよいのに、わざとこんな狭い法廷を使ふのです。着席して、直ぐに、換気が全く不充分であることが明らかだつたので、この法廷の換気はどうやつてゐるのか、と立会の書記官に尋ねました。

すると、充分な換気ができてゐますと答へました。いつもながら、溶接工のやうな過剰なフェイスガードをした警備員10名ほどが傍聴席の後ろに立つてをり、裁判官3人と、国の指定代理人が約10名が入つてくると、約80名が在廷することになるのに、充分な換気とは、どの基準に基づくものなのか、約80名が居る密室での必要換気量を理解してゐるのか、この換気状態でも換気が充分だといふのは誰の判断か、と尋ねましたら、聞いてきますと言つて法廷から出て行きました。しばらくして戻つてきて、裁判所の管理課がそのやうに判断してゐます、これ以上のことはお答へできません、と言つたので、前回も指摘したのに、全く改善されず開き直つてゐるのか、と言つて抗議してゐると、裁判官3名が入つてきました。


そして、開廷を告げた直後に、木原弁護士が発言しやうとしましたが、春名裁判長は、その発言を制止した上で、いつもと同じやうに、お座なりの注意事項を述べました。

傍聴者席に居る殆どがマスク不着用でしたので、マスク着用を傍聴者に促し、不規則発言をしてはならないこと、不規則発言があれば退廷させることもあると言ひました。

原告席には、私と木原弁護士、それに原告の中村氏、傍聴席には、本城氏が居ました。本城氏は、原告なので傍聴券は不要なのですが、この裁判の傍聴手続がどんなものかを体感するために傍聴者として出廷してくれたのです。

原告らと代理人らは、いづれもマスク不着用であり、説得してもマスク着用はしないことが解つてゐためか、専ら傍聴席に向かつてマスク着用を促しましたが、誰もこれに答へる者はゐませんし、全く無視されてゐました。


そして、木原弁護士が発言しました。


開廷の2時間前に傍聴希望者を構内に集合させたことの違法性、不当性、特に、地方から来る傍聴希望者であれば始発の新幹線を利用しても到着できないなどの不利益事情を全く考慮せず、国民が裁判を傍聴をする権利を奪つてゐることや、気温30度を超える裁判所の建物外で2時間も傍聴者を待機させ、安全配慮義務に違反し熱中症予防対策を全く講じなかつたことなどを抗議しましたが、春名裁判長は聞く耳を持ちませんでした。


そして、30秒足らずで判決の主文を朗読しただけで直ぐに退廷するので、これほどの重大事件であり、多数の傍聴者に向けて理由の要旨すら告知しないのは、不誠実極まりないことから、理由の要旨を告知しろと抗議しましたが、私の声を背中に受けたまま、振り返りもせずスゴスゴと逃げて行きました。

閉廷を告げた後なので、私の発言は法廷内での不規則発言ではないために退廷命令を出せなかつたのですが、退廷命令を出してほしかつたと思ひました。


そして、書記官から判決正本を受領し、その後、東京都調布市仙川町のキックバックカフェに移動して、午後1時30分から生配信の会見に木原弁護士とともに参加するために、判決正本を何部がコピーした後に会見会場へと移動しました。


判決内容については、移動中に通読しましたが、裁判所の用ゐる空虚な常套文句が並んだもので、判決の名に値しない無価値物でした。


この裁判の経緯についてはこれまでも何度か述べてきましたが、詳しいことは別の機会で改めて説明する予定ですが、これを通読した時点で、控訴審での主張補充等をすべき点がいくつか浮かび上がつてきました。


それは、4つあります。


第1点は、争訟性についての憲法的な視点です。裁判所法第3条第1項には、「一切の法律上の争訟」を裁判所が審理することなつてゐるのに、統治行為論、部分社会論などを理由に多くの法律上の争訟を審理の対象から外すことは、司法権の放棄であり裁判を受ける権利の侵害であるといふことです。

法律上の争訟性のいふことからして、除外されるのは、学術性や専門性のある事項などに限定されるはずです。これは、「法律上」の争訟ではなく、「学術上」の争訟だからですが、それ以外の争訟を司法の審査対象から除外することはできないことになつてゐるのが裁判所法第3条第1項の規定であることが全く理解できてゐないのです。


第2点は、当事者訴訟における権利義務の確認について、さらに具体的な事実主張を補充補強する必要があることです。たとへば、原告3人に対し、接種券が送られてきた日時とその現物を特定して、この送付がワクチン接種の努力義務の履行請求であるとして、殺人ワクチンを接種することの努力義務を課すこと自体が違憲違法であるとする主張を補充して立証することになります。

また、この裁判において東京地裁所長の施設管理の方針としてマスク着用を勧めてゐることと、この裁判の口頭弁論期日では、この事件のためだけに、他の事件関係者以外の一般人の庁舎立入を禁止し、この事件の傍聴券所持者のみの立入を認めるといふ特別警備体制とられ、法廷において、裁判長がこれまでと同様に原告らと傍聴者に対して執拗にマスクの着用を勧めたことは公知の事実です。

このやうに執拗にすすめられることが事実上の強制になつてゐるのですから、我々にはマスク着用義務の不存在確認を求める利益があり、控訴審でもマスク着用を求めてくるので、当然に確認の利益はあります。


第3点は、国が事実の認否を拒絶したことの違憲性についてです。私人間の訴訟では、これが許されても、国が被告となつてゐる場合は、憲法第13条で、国は、国民の裁判を受ける権利を侵害しないために、国を被告とする訴訟においても、「最大の尊重を必要とする」とされてゐるので、原告の主張を認否する義務が当然にあるのです。ところが、国が一切の認否を拒絶したことを奇貨として裁判所はこの行為を容認して、不公正な裁判を行つたことについて、この判決では全く言及してをりません。


第4点は、国が認否を拒否した場合は、一般論からすれば、原告側が立証責任があることになるので、これまで訴状や準備書面で主張してきたエビデンスを控訴審ではすべて提出する予定です。


キックバックカフェでの会見には1時間といふ時間的制約がありましたので、私は、第1点のみの説明をしましたが、この会見では極めて異例の事態が起こりました。


それは、キックバックカフェでの会見で、ネット参加したのは、原告の大橋眞氏と、支援者の鵜川和久氏でしたが、鵜川氏が、木原弁護士に対して、ワクチン禍で死亡した被害者遺族に対して寄り添つた活動をしてゐないのではないかとの趣旨の批判的発言をしたことです。これは、木原弁護士に対する批判のみに留まらず、我々原告団、弁護団への批判であると受け止め、我々の名誉を守るために以下のとほり反論します。


ワクチン接種後に死亡したといふ時系列の事実があつても、それだけでは因果関係まで証明できないのは常識です。接種後1時間以内に死亡しても熱中症によるものとして、解剖検査(剖検)もせず、ビニール袋に詰め込んだ遺体を遺族に確認させるだけで直ぐに火葬された人の場合は、その死因を特定すること到底出来ません。

ワクチン禍で死亡した場合の因果関係の証明は、医学的、科学的証明が必要であり、それには解剖検査(剖検)をすることが必要不可欠です。ところが、剖検を実施したのは、これまでに2%しかないのです。これでは、個別的な因果関係の証明は不可能です。


公害病の場合は、疫学的な推認、統計学的な手法で因果関係を証明することが許されてゐますが、公害病の認定がされてゐないワクチン禍による死亡についてはそれが許されません。予防接種法ではその原因を究明する義務が国にあるのに、剖検をしないことは国の立証妨害であることを、この訴訟での準備書面で主張してきましたので、そのことを私はこの会見でも同じやうに説明しました。

つまり、「遺体なき殺人」の事案と同じで、その立証は極めて困難であることは確かなのです。


私は、菅内閣及び岸田内閣の関係閣僚に対して、殺人罪等で東京地検特捜部に刑事告発した代理人です。殺人罪等の立証は、ワクチン接種が死に至る危険性があることの科学的根拠があることと、年間比較による死亡者数の急増といふ疫学的因果関係によつて立証できます。しかし、個別的にワクチン禍の死亡を証明して国家賠償訴訟を提起するには、原則として医学的因果関係を証明しなければなりません。


木原弁護士も、鵜川氏の批判に対して、同様の趣旨の説明しましたが、鵜川氏は、側に3人の弁護士が同席してをり、その弁護士らで訴訟準備をしてゐるとしながらも、その弁護士らは一切姿を見せず、一体、誰なのかも解りません。


12年前に、子宮頸がんワクチンの危険性の警鐘を鳴らした嚆矢の私からすると、これまでワクチン接種の推進を行つてきた党派の弁護士たちが、私のやうなワクチン全否定の者を完全に排除して、訴訟ビジネスを続けて居ることを知つてゐます。

これは、日本産婦人科医会が、子宮頸がんワクチンを積極的に推し進めて、習慣性流産を含む多くの不妊症の子女を増やすことを行ひながら、他方で、不妊治療に力を注いできたやうに、いまもなほマッチポンプ医療を行つて事業拡大を図つてゐます。ワクチン接種を容認しつつ、たまたま起こつたワクチン禍であるとして被害者救済の訴訟を起こすといふのは、マッチポンプ方式の訴訟利権であることにおいて全く共通したものなのです。


今回のワクチンについても、ワクチンは本来は安全で有効なものではあるが、死亡事故が起こつた場合は被害者遺族を救済する必要があるといふ考への弁護士ばかりしか殆ど居ないのではないかと思つてゐます。もし、全面的な反ワクチンの立場の弁護士であるならば、我々と同じやうに、声を上げてこの反ワクチン訴訟の弁護団に加はるか、たとへ加はらなくて全面協力し、その活動を展開してくれてゐた筈です。ステルスにして身を隠さなければならない理由がどこにあるのでせうか。


私は、木原弁護士の反論の後に、鵜川氏に対して、直接的な批判は避けながらも、鵜川氏に相互の情報交換と情報共有の必要性があることを要請しました。

本件訴訟や刑事告発を主導してきた我々こそが、一般論としてのワクチン禍による国民の多くの死亡との因果関係を論証し、そのことを前提にして、個々のワクチン禍の死亡事例を調査して、訴訟提起の可能性の有無について、死亡者遺族に寄り添つて訴訟等の検討に真つ先に取り組んできたといふ自負があるからです。

鵜川氏は、我々の訴訟の原告団及び弁護団と反ワクチン訴訟を支援する契約をしてゐるにもかかはらず、その3人の弁護士が一体誰なのか、ワクチンの危険性を認識し、確固たる反対の立場をとる弁護士なのかどうかも不明で、我々弁護団には一切紹介もせず、最も重要な死亡との因果関係の証明に関する情報等について一切提供しないといふ秘密主義を通してゐることについて抗議する意味でもありました。


我々は、この訴訟で、ワクチンの危険性を立証しようとして多くの資料の存在を指摘し、死に至る因果関係の存在について一般的な主張と立証を行つてきました。この一般的立証を踏まへて、個々の死亡者におけるワクチン接種と死亡との因果関係の存在についての個別的立証をする必要があります。そして、既往症の増悪など、その他の原因が死因ではないことについて、消去法的な立証をする必要もあります。


被害者遺族から医療過誤訴訟や薬害訴訟の訴訟委任を受ける場合、法律的な見地から、因果関係に関する不利益情報を詳しく説明し、納得してもらふ必要があります。仮に、勝訴の見込みが少なくても、それでも訴訟を行ひたいといふ強い遺族の意思を確認しなければ受任できません。勝訴の見込みを過大に告げて勝訴への期待を抱かせて委任を受けると、訴訟詐欺になりかねないのです。ワクチン接種の際にも医師にはインフォームド・コンセントが必要であるのと同様に、被害者救済の訴訟においても、弁護士には、法律的なインフォームド・コンセントが必要なのです。

遺族には、大切な人が亡くなつた精神的苦痛に加へて、弁護士が因果関係の立証方針の詳細についての説明責任を果たさず、結果的には訴訟詐欺になりかねない危険があることについて、私は以前に鵜川氏に警告してゐました。鵜川氏もその警告をよく理解してくれたと思つてゐました。そうであれば、これまで多くの医療過誤訴訟等に経験のある私にも相談してくれればよかつたのですが、私が警告した後は、鵜川氏からは何の連絡もなく、いきなりこの会見の場で木原弁護士に対する事実無根の批判をするといふのは、明らかに信義に悖ります。

木原弁護士を批判するのではなく、鵜川氏が依頼してゐる弁護士3人の弁護士が私の警告に異論があるのであれば、その弁護士が私と協議すればよいことです。少なくとも私の警告に対して釈明して被害者遺族を納得させてもらふ必要があつたはずです。それをせずに木原弁護士を批判するのは、唐突で全く筋違ひの発言であり、訴訟提起の初めから協力してくれてきた鵜川氏の言動としては、理解に苦しむものでした。意思の疎通を欠いて誤解があつたのであれば、理解を深めるためにもつと話し合ふことができたのに、あのやうな方法をとられたことは、まことに残念なことでした。いまからでも被害者遺族が納得できるための努力をしていただきたいものです。


私たちは、これまで死亡者の被害者遺族からも、ワクチン禍で後遺症に苦しんでゐる被害者の多くからも相談を受けてゐます。同調圧力でワクチン接種を余儀なくされたり、マスク着用を強要され、それを拒んだために失職して生活苦に陥つた人など多種多様な被害者が居ます。死亡した特定の人だけが被害者ではありません。ワクチン禍で将来を嘆いて自殺者した人も歴としたワクチン被害者なのです。被害者は国民のすべてなのです。


我々には、これからもこの訴訟以外にも取り組むべき運動の課題が多くあり、いくら手があつても足りません。ですから、セクト主義や秘密主義に陥ることなく、同じ志を持つ多くの人が情報を共有し、連携連帯して戦つて行かなければなりません。

我々としては、これまで通り、訴訟に関する情報を一方的ではあつても発信し続け、できる限り情報の共有を行ひ、多くの同士とともに最後まで戦ひ続けることに何ら変はりはないのです。

南出喜久治(令和4年8月5日記す)


前の論文へ | 目 次 | 次の論文へ