天皇の側からのクーデター
ところで、帝國憲法の上諭に「朕カ子孫及ヒ臣民ハ敢ヘテ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ」とある點について、これを「天皇の側からのクーデターの禁止宣言なり」とする天皇機關説からの見解(美濃部達吉)があつた。
專制君主的色彩のある帝國憲法と雖も、それが立憲的(合憲的)に運用されることは當然のことであつて、ここでいふ「クーデター」が非立憲的軍事行動(違憲的軍事行動)を意味するとすれば、これは自明のことを述べたものに過ぎない。しかし、このことに關し、二・二六事件の收拾處理と大東亞戰爭の敗戰處理について、これらを「天皇側からのクーデター」の見地から國法學的に考察することは決して無意味なことではない。