國體護持總論
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國家の連結

このやうに、國家は、多かれ少なかれ國際關係の影響を受ける。それゆゑ、理念的に認識しうる獨立した單一國家が原型ではあつても、世界に存在する國家は、概ね複數の國家と何らかの關係を持ち、その國家に何らかの影響を受け、そしてその國家に影響を與へることになる。

しかし、それでも、單一國家として他國との外交關係において自覺的に一定の制約を課し、關係性を希薄にする國家がある。それが「永世中立國」である。それは、軍事的に中立であり、いかなる國に對しても自衞戰爭以外の戰爭をなさず、他の國家間の戰爭に對しても中立を保持する義務があることを宣言し、そのことを世界の國々が承認することによつて永世中立國は成立する。

スイスがこの例であるが、スイスの場合は、承認國である英佛露などの七か國が承認すると同時にスイス領域の保全と不可侵を保障したため、スイスが侵略された場合には七か國はスイスを防衞する義務がある。また、永世中立國では、自國に他國の軍が駐留することも行軍目的で侵入することも許されず、これに對しては、軍事的に排除する義務があるので、中立とは、法的にも實際的にも完全重武裝中立でしかあり得ないことになる。

ところで、このやうな中立は、地政學的にも不可能な場合が殆どで、世界の國々は、やはり共存のための何らかの關係を持つことが國防に資することから、軍事的な關係だけではなく、多種多樣な關係を他國との間で持つことになる。その關係は、條約によるものが多く、その態樣についても、緩やかな關係から密接不可分な關係まで樣々である。

まづ、最も緩やかな關係としては、「單純條約關係」である。これには非軍事的な條約關係から、さらにもう一歩進めば、軍事的な條約關係となる。これらは永久不變なものではなく、國際情勢の變化によつて常に變化する。

そして、さらに、より強固な關係としては、「同君連合關係」がある。これは、複數の國家が同一の君主の下に統治されてゐ複數の國家連合のことである。複數の君主國家が連合するときは、それぞれの國家の「王」の上に、これらを統合する「皇帝」が君臨する場合であり、複數の共和制國家が連合するときは、それぞれの國家の元首の上に、立憲君主的國家連合の「皇帝」が存在し、その皇帝が連合國全體の外交權を有してゐるといふ國家關係のことである。これには、同君連合の各構成國が獨立した國家主權を持つ「人的同君連合」(身上連合 personal union)と、中央政府が各構成國を支配する物的同君連合(物上連合 real union)との區別がある。

さらに、これよりも國家關係が密接である關係としては、「國家連合關係」がある。これは、共通の目的を達成するために複數の國家が參加した條約等で創設した連合政權に一定の權限を移讓した體制のことである。參加國は、移讓した權限を除いて外交能力を持つが、これは、次に述べる「連邦國家關係」になる前段階であり、EUの構想は、國家連合から連邦國家へと段階的に移行するための試みである。

そして、その最終目的とする「連邦國家關係」といふのは、國家連合が憲法や憲法的條約などで完全に結合し、これまで各國に留保されてゐた外交權の全てを連邦政府に移讓した體制のことである。外交權を移讓した各國は、國際法上の國家としての適格を失ふことになる。その典型例としては、米國があり、平成三年十二月に崩壞したソビエト社會主義共和國連邦(以下「ソ連」又は「舊ソ連」といふ。)やその後に成立した獨立國家共同體(Commonwealth of Independent States CIS)も同じである。

次に、さらにより密接な國家間關係としては、「保護關係」がある。これは、條約によつて、一方の國(被保護國)が、他方の國(保護國)に對し、自國の外交能力に基づく一切の權限を委ねる關係である。随從する關係となるが、被保護國は保護國の一部になる譯ではない。保護國が他國と宣戰して交戰國となつたとしても、それだけで被保護國が自動的に交戰國になることはないのである。

そして、その随從の程度がさらに進んだ形態が「從屬(附庸)關係」である。保護關係の場合、被保護國は國家として獨立はしてゐるが、從屬關係の場合はさうでなく、本國である宗主國は勿論獨立國であるが、從屬國(附庸國)は國際法上獨立國としては認められてゐない。例としては、支那と李氏朝鮮との關係、連合國とわが國との關係(占領時代)、中華人民共和國(以下「中共」といふ。)とチベットとの關係などであり、いづれも軍事力による侵略の結果である。

この場合、宗主國が他國と宣戰して交戰國となつた場合、從屬國(附庸國)もその一部と評價されて交戰國(交戰團體)となる。それゆゑ、後に述べるとほり、朝鮮戰爭(韓國動亂)において、わが國は宗主國のアメリカの參戰と同時に、占領憲法下で交戰國(交戰團體)となつたのである。

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