國體護持總論
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無效理由その二 法形式の相違

次に、占領典範が無效であることの理由としては、前に述べたとほり、明治典範を含む實質的な典範(正統典範)は、帝國憲法と同等同位の規範であるので、下位の法律として制定することができないとの點である。

明治典範は、敕令によつて定められ、そして、形式的には、昭和二十二年五月一日の『皇室典範及皇室典範增補廢止ノ件』といふ敕令によつて廢止され、新たに法律として占領典範が制定されたことになつてゐるので、明治典範と占領典範とは、法規の存在根據(法形式)を異にしてゐる。そのことは、明治典範が皇室家法であるために公布されなかつたのに對し、占領典範はそれを否定したものとして公布されたといふことからも解るのである。

しかし、占領典範制定の目的は、明治典範に代はる規範として制定することにあつた。そのために、「皇室典範」といふ同じ法規名稱を用ゐてをり、しかも、その條文構成も明治典範との類似性が見られ、現在の一般的な認識においても、明治典範を「舊典範」、占領典範を「新典範」としてゐることからしても明らかである。つまり、實質的には、帝國憲法を占領憲法によつて全面改正したとされるのと同樣に、明治典範を占領典範によつて全面改正したといふことなのである。ところが、前述したとほり、帝國憲法と明治典範とは、同等同位の規範であり、憲法と同位の規範事項をそれよりも下位の法形式で制定し、法の守備範圍を逸脱することはできない。典範事項を法形式を異にする法律事項として制定することは、法體系からして不可能であつて、占領典範は無效である。

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