國體護持總論
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無效理由その三 規範廢止の無效性

明治典範は、規範國體といふ不文法のうち、皇統に關する技術的、手續的な事項などについて定められたものであり、できる限り正確に「書寫」して完成されたものである。それゆゑに、これを再び不文法に戻して、正統典範の法文化を廢止することが假に出來るとしても、さらに進んで、正統典範の實質的な規範そのものを廢止(無規範化)することは、無效であるといふ前に、そもそも不可能なことである。

帝國憲法第四條には、「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ」とあり、これは、天皇と雖も國體の下にあるとの「國體の支配」の原則を表明したものであつて、典憲に共通した原則である。それゆゑ、典範といふ皇室の家法についても、明治天皇が「遺訓ヲ明徴ニシ皇家ノ成典ヲ制立シ以テ丕基ヲ永遠ニ鞏固ニスヘシ」として正統典範の事項の一部を成文法化されたものである。法治主義もまた規範國體に含まれる事項であるから、その規範自體を廢止(無規範化)して法治主義そのものを放棄し、正統典範といふ規範國體自體を否定してしまふことは、そもそも不可能なことである。國體の支配(法の支配)とは、天皇と雖も國體の下にあるといふことであり、規範國體の内容となる法治主義を否定するのみならず、規範國體自體を否定して無規範化することは許されない。敕令によると雖も、昭和二十二年五月一日の『皇室典範及皇室典範增補廢止ノ件』によつて明治典範の規範自體を廢止したといふのであれば、それは、その規範部分に該當する規範國體を否定(無規範化)することを意味することになり、およそ不可能なことであつて當然に無效である。

帝國憲法第七十六條第一項によれば、「法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ效力ヲ有ス」とあり、敕令もまたこの適用を受ける。これがまさに「國體の支配」の明文上の根據であり、この廢止の敕令は規範國體に違反するので無效なのである。後に述べる占領憲法の場合と同樣に、承詔必謹(法治主義)は、國體の支配までも否定することはできないのである。

ちなみに、この「承詔必謹」とは、推古天皇十二年夏四月、皇太子聖德太子が作り賜ふた憲法十七條の「三に曰く、詔を承りては必ず謹め。君をば天とす。臣をば地とす。・・・・・」とあることを意味し、我が國における法治主義の原點のことであるが、これについては改めて述べることとする。

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