國體護持總論
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著書紹介

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舊無效論と眞正護憲論の相違

これまでの無效論を「舊無效論」とし、私見の無效論を「眞正護憲論(新無效論)」として區別するのは、兩論の論理構造に相違があるためであるが、兩論に共通するのは、ともに「無效論」である點である。つまり、占領憲法が憲法としては、まがふかたなく無效であるとする點と、無效であるとの判斷が我が國の正氣を回復する道であると認識してゐる點において共通してゐる。それゆゑ、眞正護憲論(新無效論)が舊無效論を批判するのは、純粹に論理上の法律學的理由によるものであつて、志の相違にあるのではない。あくまでも、これは論理構造の相違であり、その相違を説明するについて、眞正護憲論(新無效論)は、舊無效論との比較において次のやうな主たる特徴があることに着目されるべきである。

1 眞正護憲論(新無效論)は、國體論に基づいて主權論を否定し、國内系と國際系との區別を明確にして、規範國體を頂點とする帝國憲法體系の階層的構造を明らかにしたこと。
2 帝國憲法と占領憲法の關係について、舊無效論は、これらが同列の二者擇一關係(一元的關係)であるとするのに對し、眞正護憲論(新無效論)は、これらが上下の包攝關係(二元的關係)であることを明らかにしたこと。
3 ポツダム宣言の受諾と降伏文書の調印によつて獨立を喪失し、桑港條約の締結によつて獨立を回復するまでの非獨立占領統治時代になされた行爲は、いづれも帝國憲法第十三條の講和大權に基づいて締結された一連の講和條約群であることを眞正護憲論(新無效論)が明らかにしたこと。
4 交戰權とは、宣戰大權、講和大權及び統帥大權が統合された權利であり、戰爭状態の終結を約した桑港條約、日華平和條約、日ソ共同宣言、日中共同聲明といふ各講和條約の締結と日華平和條約の破棄は、いづれも帝國憲法第十三條に基づくものであつて、交戰權が認められない占領憲法に基づくものではないこと、そして、これによつて帝國憲法は各講和條約の締結時點においても實效性を有してをり、今もなほ現存してゐる反面、占領憲法には今もなほその實效性がないことを眞正護憲論(新無效論)が明らかにしたこと。
5 占領統治下におけるポツダム緊急敕令及びこれに基づくポツダム命令の法的意義と效力に關して、眞正護憲論(新無效論)のみが最高裁判所の判例と整合性を有する唯一の見解であることを明らかにしたこと。
6 眞正護憲論(新無效論)は、帝國憲法第七十五條を基軸として、占領憲法が憲法として無效であることを理由付け、同時に、明治典範廢止の無效、占領典範の制定の無效を明らかにしたこと。
7 眞正護憲論(新無效論)は、帝國憲法第七十六條第一項は、「無效規範の轉換」の法理を示す評價規範であることを明らかにし、これによつて、占領憲法は帝國憲法第十三條に基づく講和條約(東京條約、占領憲法條約)として評價され、一連の講和條約群の中間に位置するものであるとしたこと。
8 眞正護憲論(新無效論)は、承詔必謹論による無效論批判を回避し、「有效の推定」とか「不遡及無效」などといふ矛盾した論理を用ゐずに、法的安定性を維持できることを明らかにしたこと。

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