國體護持總論
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正統憲法調査會

そして、復元措置を專門的に檢討するために、「樞密代行院」の下部機關である諮問機關として、「正統憲法調査會」を内閣の主管下に設置する。これには、國會、内閣、司法などの各機關及び一般から委員を選任して組織し、具體的な復元措置の内容と手順を策定することになる。

この「正統憲法調査會」を國會の所管としないのは、國會には帝國憲法改正案をまとめ上げるだけの實質的な能力がなく、また、後述するとほり、その改正案を最終的には陛下に上奏することになるため、立法機關である帝國議會代行機關が天皇大權である發議權に關與することになり、帝國憲法解釋上の疑義が生ずるためである。

正統憲法調査會は、帝國憲法の第一章から第七章に對應した小委員會と、占領憲法に加へられた地方自治小委員會の小委員會に細分化されて檢討が始まる。

そして、地方自治小委員會などの各小委員會においては、さらに、各項目毎に小部會を設け、部分會議と全體會議で檢討することになる。勿論、一般からの請願を廣く受け入れることになる。

そこでは、たとへば、①現行法令全體を正統憲法體系に適合するやうに整序し、正統憲法下では存續しえない法令の檢討とその改廢及び改廢の經過措置の檢討、②樞密院、貴族院、大審院などの既に缺損してゐる機關の復元ないしは代行機關設置の檢討、③皇軍の組織その他統治機構全體の檢討、④占領憲法下の法令、行政處分、確定判決などのうち正統憲法體系との整合性を缺くものについて、改廢、補正又は再審などの手續措置の檢討、⑤臣民の權利及び義務についての檢討、⑥家族制度、相續制度の檢討、⑦教育制度の檢討、⑧地方自治制度の檢討、⑨行財政、税制の檢討、⑩帝國憲法の改正すべき條項の檢討などが行はれる。

そして、正統憲法調査會のとりまとめた報告書を踏まへて樞密代行院がさらに檢討を加へたものを原案として、國會に報告し、さらに臣民に周知させ、さらなる提言等を求めて調整して成案とする。これを以て帝國憲法改正發議のための上奏を行ふ。

このやうな手續を經ての上奏は、決して發議權の侵害とはならないものと解される。この請願上奏は『五箇條ノ御誓文』にいふ「萬機公論」に適ふ行爲である。そして、その後は、帝國憲法第七十三條に基づいて正規の改正手續がなされることになる。

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