國體護持總論
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著書紹介

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受益者負擔原則

一方、汚水處理以外の廢棄物(拜歸物)の處理については「受益者負擔原則」が妥當する。これは、汚水處理における「汚染者負擔原則」といふ、いはば「出口基準」(結果基準)とは異なり、「入口基準」(原因基準)である。生産至上主義の産業構造によれば、廢棄物の發生原因は、消費部門固有の要因によるものは少ない。もつとも、廢棄物を所定の場所や方法とは異なる投棄をする者にその行爲責任を問ふのは當然であつて、ここでいふ消費者とは、産業構造で通常の行動性向が豫定されてゐる消費者をいふ。その消費者を前提とすれば、第一次産業による生産物固有の廢棄物(生ゴミなど)は、本來は土に歸りうるものであるから、これを廢棄物處理の過程に乘せることは消費者の責任であるが、都市の消費生活においては、歸すべき土が存在しないことが多く、その限度では消費者負擔を勞務負擔としては求められず、金錢負擔によることになる。

むしろ、廢棄物の發生原因は、主に生産過程と流通過程にある。即ち、資源的再生を豫定してゐない製法による工業製品(例へば、使ひ捨て商品、粗大廢棄物)など、生産過程で既に將來の廢棄物として豫定されてゐる物、生産から消費に至る流通過程においてのみ必要な物(例へば、容器、包裝紙、包裝材料)、さらに、完全な消費に至らなかつた物(例へば、殘飯、賣れ殘り生鮮食料品)などである。しかし、これらはいづれも流通效率や消費效率を高めるための原價として認識されてをり、これらの便益と低價格化による利益は反射的に消費者も享有してゐるのである。そこで、廢棄物處理に關する費用は、生産者や流通者及び消費者が應分に負擔し、その處理勞務は消費者が負擔すべきことになる。この廢棄物處理についても、汚水處理の場合と同樣、政治的・法律的・行政的障害が多いが、技術的な障害は比較的少ない。受益者單位又は地域・集落單位で技術的に處理が可能であり、その處理費用も節約しうるのである。このやうな、根本的改革を行ふについては、受益者負擔原則による税制の拔本的改革が前提になることは、汚水處理の場合と同樣である。

ところで、汚水處理や廢棄物處理などの「再生」において、「小規模分散型」の處理を實現することは、自立再生經濟單位を極小化する效果があり、危險分散と安定化はさらに促進されるのである。勿論、經濟性や技術性の限界から、ある程度の「大規模集中型」の處理が必要な場合もあらうが、經濟效率や技術革新を不斷に促進向上させて「小規模分散型」の處理へと向かふことが必要である。

そして、受益者負擔といふことに關して、さらに言及しなければならないものがある。現在、地球温暖化が石油の燃燒などによる温室效果ガスの大量發生によるとの假説により、平成九年の『京都議定書』を採擇したりして國際問題になつてゐるが、その考へが科學的に正しいのか否かは一まづ置くとしても、もし、さうであれば、この受益者負擔の原則からして、需要者側、つまり消費國側だけにその對策費等の負擔を求めるのは不合理である。メジャーやオペックなどを含め、石油の生産、販賣、流通などに關與して利益を得てゐる供給者側にも應分の負擔を求めるべきは當然である。

温室效果ガスの原因とされる石油についての受益者負擔原則を確立することは、生産者にも責任があることを世界的な認識とすることである。親が市場から買つてきた食べ物を子供に與へて子供が食中毒になつたとき、誰が責任を負ふのか、といふことを自問自答すべきなのである。

いづれにせよ、この受益者負擔の原則を廢棄物處理を含めた産業構造全體における世界基準にすることが喫緊の課題と云へよう。

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