【資料番號 三十九】
日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との共同宣言
(日ソ共同宣言)昭和三十一年條約第二十號
(昭和三十一年十月十九日調印、同年十二月十二日發效)
相互理解と協力のふん圍氣のうちに行われた交渉を通じて、日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との相互關係について隔意のない廣範な意見の交換が行われた。日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、兩國間の外交關係の回復が極東における平和及び安全の利益に合致する兩國間の理解と協力との發展に役立つものであることについて完全に意見が一致した。
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦の全權團の間で行われたこの交渉の結果、次の合意が成立した。
1【戰爭状態の終結】
日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との間の戰爭状態は、この宣言が效力を生ずる日に終了し、兩國の間に平和及び友好善隣關係が回復される。
2【外交及び領事關係】
日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との間に外交及び領事關係が回復される。兩國は、大使の資格を有する外交使節を遲滯なく交換するものとする。また、兩國は、外交機關を通して、兩國内におけるそれぞれの領事館の開設の問題を處理するものとする。
3【國連憲章の原則・自衞權・不干渉】
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、相互の關係において、國際連合憲章の諸原則、なかんずく同憲章第二條に掲げる次の原則を指針とすべきことを確認する。
(a) その國際紛爭を、平和的手段によつて、國際の平和及び安全竝びに正義を危うくしないように、解決すること。
(b) その國際關係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる國の領土保全又は政治的獨立に對するものも、また、國際連合の目的と兩立しない他のいかなる方法によるものも愼むこと。
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、それぞれ他方の國が國際連合憲章第五十一條に掲げる個別的又は集團的自衞の固有の權利を有することを確認する。
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、經濟的、政治的又は思想的のいかなる理由であるとを問わず、直接間接に一方の國が他方の國内事項に干渉しないことを、相互に、約束する。
4【日本國の國連加入】
ソヴィエト社會主義共和國連邦は、國際連合への加入に關する日本國の申請を支持するものとする。
5【未歸還日本國民に對する措置】
ソヴィエト社會主義共和國連邦において有罪の判決を受けたすべての日本人は、この共同宣言の效力發生とともに釋放され、日本國へ送還されるものとする。
また、ソヴィエト社會主義共和國連邦は、日本國の要請に基いて、消息不明の日本人について引き續き調査を行うものとする。
6【賠償・請求權の放棄】
ソヴィエト社會主義共和國連邦は、日本國に對し一切の賠償請求權を放棄する。
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、千九百四十五年八月九日(ソ連の對日參戰の日)以來の戰爭の結果として生じたそれぞれの國、その團體及び國民のそれぞれ他方の國、その團體及び國民に對するすべての請求權を、相互に、放棄する。
7【通商關係の交渉】
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、その貿易、海運その他の通商の關係を安定したかつ友好的な基礎の上に置くために、條約または協定を締結するための交渉をできる限りすみやかに開始することに同意する。
8【漁業協力】
千九百五十六年五月十四日にモスクワで署名された北西太平洋の航海における日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との間の條約及び海上において遭難した人の救助のための協力に關する日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との間の協定は、この宣言の效力發生と同時に效力を生ずる。
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、魚類その他の海洋生物資源の保存及び合理的利用に關して日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦が有する利害關係を考慮し、協力の精神をもつて、漁業資源の保存及び發展竝びに航海における漁獵の規制及び制限のための措置を執るものとする。
9【平和條約・領土】
日本國及びソヴィエト社會主義共和國連邦は、兩國間に正常な外交關係が回復された後、平和條約の締結に關する交渉を繼續することに同意する。
ソヴィエト社會主義共和國連邦は、日本國の要望にこたえかつ日本國の利益を考慮して、齒舞群島及び色丹島を日本國に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本國とソヴィエト社會主義共和國連邦との間の平和條約が締結された後に現實に引き渡されるものとする。
10【批准】
この共同宣言は批准されなければならない。この共同宣言は、批准書の交換の日に效力を生ずる。批准書の交換は、できるだけすみやかに東京で行われなければならない。