國體護持總論
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敗戰責任

ここで、「敗戰責任」といふ用語の定義は、大東亞戰爭に敗戰したことによつて受けた不利益、すなはち、「敗戰による不利益」といふ意味に用ゐることとする。決して、法的責任と道義的責任といふ意味ではない。

その意味からすれば、國民は、國民主權といふ傲慢な權利と數多くの基本的人權を占領憲法によつて取得したので敗戰責任はなかつた。敗戰責任どころか、戰勝國の國民の扱ひと見紛ふが如き敗戰利益者となつた。しかし、その一方で、天皇、皇族が敗戰責任を負はれたことは明らかである。敗戰により、皇室の家法である皇室典範(正統典範)を廢止され、天皇、皇族から一切の自治と自律を奪つた同名の皇室彈壓法(占領典範)が制定され、帝國憲法で定められた天皇大權のすべてを剥奪された上、皇室財産が没收され、皇籍離脱の強制がなされ、「象徴」といふ名の「傀儡」となつたからである。

このやうに、「敗戰責任は國民にはなく天皇皇族にあり」との結論が明確に出てゐるのに、いつまでも戰爭に至る「原因」に關して、天皇に「戰爭責任」があつたか否かを喧しく議論するのは、まるで、判決を執行をした後に、その被告人不在のまま裁判をして有罪か無罪かを審理すること以上に不合理かつ無意味なことである。

そして、敗戰による不利益を被つた皇室とは對極のところに「敗戰利得者」がゐる。それは、先帝陛下の御聖斷によつて救はれ、その後は國民主權なるものを振りかざして占領典範といふ皇室彈壓法を制定した「國民」である。「怨みに報ゆるに德を以てす」ではなく、「恩を仇で返す」不義の姿がそこにあつた。

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