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國際連合憲章

昭和二十年六月二十六日署名、
同年十月二十四日發效、
昭和三十一年十二月十八日日本國加入效力發生、
同月十九日公布條約第二十六號

われら連合國の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に與へた戰爭の慘害から將來の世代を救ひ、基本的人權と人間の尊嚴及び價値と男女及び大小各國の同權とに關する信念をあらためて確認し、正義と條約その他の國際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる條件を確立し、一層大きな自由の中で社會的進歩と生活水準の向上とを促進すること。

竝びに、このために、寛容を實行し、且つ、善良な人として互に平和に生活し、國際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合はせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用ゐないことを原則の受諾と方法の設定によつて確保し、すべての人民の經濟的及び社會的發達を促進するために國際機構を用ゐることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。

よつてわれらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に會合し、全權委任状を示してそれが良好妥當であると認められた代表者を通じて、この國際連合憲章に同意したので、ここに國際連合といふ國際機構を設ける。

第一章 目的及び原則

第一條 國際連合の目的は、次のとほりである。

1 國際の平和および安全を維持すること。そのために、平和に對する脅威の防止及び除去と侵略行爲その他の平和の破壞の鎭壓とのため有效な集團的措置をとること竝びに平和を破壞するに至る虞のある國際的の紛爭又は事態の調節又は解決を平和的手段によつて且つ正義及び國際法の原則に從つて實現すること。

2 人民の同權及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸國民の有效關係を發展させること竝びに世界平和を強化するために他の適當な措置をとること。

3 經濟的、社會的、文化的又は人道的性質を有する國際問題を解決することについて、竝びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人權及び基本的自由を尊重するやうに助長奬勵することについて、國際協力を達成すること。

4 これらの共通の目的に當つて諸國の行動を調和するための中心となること。

第二條 この機關及びその加盟國は、第一條に掲げる目的を達成するに當つては、次の原則に從つて行動しなければならない。

1 この機關は、そのすべての加盟國の主權平等の原則に基礎をおいてゐる。

2 すべての加盟國は、加盟國の地位から生ずる權利及び利益を加盟國のすべてに保障するために、この憲章に從つて負つてゐる義務を誠實に履行しなければならない。

3 すべての加盟國は、その國際紛爭を平和的解決手段によつて國際の平和及び安全竝びに正義を危ふくしないやうに解決しなければならない。

4 すべての加盟國は、その國際關係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる國の領土保全又は政治的獨立に對するものも、また、國際連合の目的と兩立しない他のいかなる方法によるものも愼まなければならない。

5 すべての加盟國は、國際連合がこの憲章に從つてとるいかなる行動についても國際連合にあらゆる援助を與へ、且つ、國際連合の防止行動又は強制行動の對象となつてゐるいかなる國に對しても援助の供與を愼まなければならない。

6 この機構は、國際連合加盟國でない國が、國際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に從つて行動することを確保しなければならない。

7 この憲章のいかなる規定も、本質上いづれかの國の國内管轄權内にある事項に干渉する權原を國際連合に與へるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟國に要求するものでもない。但し、この權原は、第七章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

第二章 加盟國の地位

第三條 國際連合の原加盟國とは、サン・フランシスコにおける國際機構に關する連合國協議に參加した國又はさきに千九百四十二年一月一日の連合國宣言に署名した國で、この憲章に署名し、且つ、第百十條に從つてこれを批准するものをいふ。

第四條

1 國際連合における加盟國の地位は、この憲章に掲げる義務を受諾し、且つ、この機構によつてこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好國に開放されてゐる。

2 前記の國が國際連合加盟國となることの承認は、安全保障理事會の勸告に基いて、總會の決定によつて行はれる。

第五條 安全保障理事會の防止行動又は強制行動の對象となつた國際連合加盟國に對しては、總會が、安全保障理事會の勸告に基いて、加盟國としての權利及び特權の行使を停止することができる。これらの權利及び特權の行使は、安全保障理事會が回復することができる。

第六條 この憲章に掲げる原則に執拗に違反した國際連合加盟國は、總會が安全保障理事會の勸告に基いて、この機構から除名することができる。

第三章 機關

第七條

1 國際連合の主要機關として、總會、安全保障理事會、經濟社會理事會、信託統治理事會、國際司法裁判所及び事務局を設ける。

2 必要と認められる補助機關は、この憲章に從つて設けることができる。

第八條 國際連合は、その主要機關及び補助機關に男女がいかなる地位にも平等の條件で參加する資格があることについて、いかなる制限も設けてはならない。

第四章 總會

第九條

1 總會は、すべての國際連合加盟國で構成する。

2 各加盟國は、總會において五人以下の代表者を有するものとする。

第十條 總會は、この憲章の範圍内に有る問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機關の權原及び任務に關する問題若しくは事項を討議し、竝びに、第十二條に規定する場合を除く外、このやうな問題又は事項について國際連合加盟國若しくは安全保障理事會又はこの兩者に對して勸告することができる。

第十一條

1 總會は、國際の平和及び安全の維持についての協力に關する一般原則を、軍備縮小及び軍備規則を律する原則も含めて、審議し、竝びにこのやうな原則について加盟國若しくは安全保障理事會又はこの兩者に對して勸告することができる。

2 總會は、國際連合加盟國若しくは安全保障理事會によつて、又は第三十五條2に從ひ國際連合加盟國でない國によつて總會に付託される國際の平和及び安全の維持に關するいかなる問題も討議し、竝びに、第十二條に規定する場合を除く外、このやうな問題について、一若しくは二以上の關係國又は安全保障理事會あるいはこの兩者に對して勸告をすることができる。このやうな、問題で行動を必要とするものは、討議の前又は後に、總會によつて安全保障理事會に付託されなければならない。

3 總會は、國際の平和及び安全を危くする虞のある事態について、安全保障理事會の注意を促すことができる。

4 本條に掲げる總會の權原は、第十條の一般的範圍を制限するものではない。

第十二條

1 安全保障理事會がこの憲章によつて與へられた任務をいづれかの紛爭又は事態について遂行してゐる間は、總會は、安全保障理事會が養成しない限り、この紛爭又は事態について、いかなる勸告もしてはならない。

2 事務總長は、國際の平和及び安全の維持に關する事項で安全保障理事會が取り扱つてゐるものを、その同意を得て、會期ごとに總會に對して通告しなければならない。事務總長は、安全保障理事會がその事項を取り扱ふことをやめた場合にも、直ちに、總會又は、總會が開會中でないときは、國際連合加盟國に對して同樣に通告しなければならない。

第十三條

1 總會は、次の目的のために研究を發議し、及び勸告をする。

a 政治的分野において國際協力を促進すること竝びに國際法の漸進的發達及び法典化を奬勵すること。

b 經濟的、社會的、文化的、教育的及び保險的分野において國際協力を促進すること竝びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人權及び基本的自由を實現するやうに援助すること。

2 前記の1bに掲げる事項に關する總會の他の責任、任務及び權原は、第九章及び第十章に掲げる。 第十四條 第十二條の規定を留保して、總會は、起因にかかはりなく、一般的福祉又は諸國間の友好關係を害する虞があると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勸告することができる。この事態には、國際連合の目的及び原則を定めるこの憲章の規定の違反から生ずる事態が含まれる。

第十五條

1 總會は、安全保障理事會から年次報告及び特別報告を受け、これを審議する。この報告は、安全保障理事會が國際の平和及び安全を維持するために決定し、又はとつた措置の説明を含まなければならない。

2 總會は、國際連合の他の機關から報告を受け、これを審議する。

第十六條 總會は、第十二章及び第十三章に基いて與へられる國際信託統治制度に關する任務を遂行する。この任務には、戰略地區として指定されてゐない地區に關する信託統治協定の承認が含まれる。

第十七條

1 總會は、この機構の豫算を審議し、且つ、承認する。

2 この機構の經費は、總會によつて割り當てられるところに從つて、加盟國が負擔する。

3 總會は、第五條に掲げる專門機關との財政上及び豫算上の取極を審議し、且つ、承認し、竝びに、當該專門機關に勸告する目的で、この專門機關の行政的豫算を檢査する。

第十八條

1 總會の各構成國は、一個の投票權を有する。

2 重要問題に關する總會の決定は、出席し且つ投票する構成國の三分の二の多數によつて行はれる。重要問題には、國際の平和及び安全の維持に關する勸告、安全保障理事會の日常任理事國の選擧、經濟社會理事會の理事國の選擧、新加盟國の國際連合への加盟の承認、加盟國としての權利及び特權の停止、加盟國の除名、信託統治制度の運用に關する問題竝びに豫算問題が含まれる。

3 その他の問題に關する決定は、三分の二の多數によつて決定されるべき問題の新たな部類の決定を含めて、出席し且つ投票する構成國の過半數によつて行はれる。 第十九條 この機構に對する分擔金の支拂が延滯してゐる國際連合加盟國は、その延滯金の額がその時までの滿二年間にその國から支拂はれるべきであつた分擔金の額に等しいか又はこれをこえるときは、總會で投票權を有しない。但し、總會は、支拂の不履行がこのやうな加盟國にとつてやむを得ない事情によると認めるときは、その加盟國に投票を許すことができる。

第二十條 總會は、年次通常會期として、また、必要がある場合に特別會期として會合する。特別會期は、安全保障理事會の要請又は國際連合加盟國の過半數の要請があつたとき、事務總長が招集する。

第二十一條 總會は、その手續規則を採擇する。總會は、その議長を會期ごとに選擧する。

第二十二條 總會は、その任務の遂行に必要と認める補助機關を設けることができる。

第五章 安全保障理事會

第二十三條

1 安全保障理事會は、十五の國際連合加盟國で構成する。中華民國、フランス、ソヴィエト社會主義共和國連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合國及びアメリカ合衆國は、安全保障理事會の常任理事國となる。總會は、第一に國際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに對する國際連合加盟國の貢獻に、更に衡平な地理的分配に特に妥當な考慮を拂つて、安全保障理事會の非常任理事國となる他の十の國際連合加盟國を選擧する。

2 安全保障理事會の非常任理事國は、二年の任期で選擧される。安全保障理事會の理事國の定數が十一から十五に增加された後の第一回の非常任理事國の選擧では、追加の四理事國のうち二理事國は、一年の任期で選ばれる。退任理事國は、引き續いて再選される資格がない。

3 安全保障理事會の各理事國は、一人の代表者を有する。

第二十四條

1 國際連合の迅速且つ有效な行動を確保するために、國際連合加盟國は、國際の平和及び安全の維持に關する主要な責任を安全保障理事會に負はせるものとし、且つ、安全保障理事會がこの責任に基く義務を果たすに當つて加盟國に代わつて行動することに同意する。

2 前記の義務を果たすに當つては、安全保障理事會は、國際連合の目的及び原則に從つて行動しなければならない。この義務を果たすために安全保障理事會に與へられる特定の權限は、第六章、第七章、第八章及び第十二章で定める。

3 安全保障理事會は、年次報告を、また、必用があるときは特別報告を總會に審議のために提出しなければならない。

第二十五條 國際連合加盟國は、安全保障理事會の決定をこの憲章に從つて受諾し且つ履行することに同意する。

第二十六條 世界の人的及び經濟的資源を軍備のために轉用することを最も少くして國際の平和及び安全の確立及び維持を促進する目的で、安全保障理事會は、軍備規則の方式を、確立するため國際連合加盟國に提出される計畫を、第四十七條に掲げる軍事參謀委員會の援助を得て、作成する責任を負ふ。

第二十七條

1 安全保障理事會の各理事國は、一個の投票權を有する。

2 手續事項に關する安全保障理事會の決定は、九理事國の贊成投票によつて行はれる。

3 その他のすべての事項に關する安全保障理事會の決定は、常任理事國の同意投票を含む九理事國の贊成投票によつて行はれる。但し、第六章及び第五十二條3に基く決定については、紛爭當事國は、投票を棄權しなければならない。

第二十八條

1 安全保障理事會は、維持して任務を行ふことができるやうに組織する。このために、安全保障理事會の各理事國は、この機構の所在地に常に代表者を置かなければならない。

2 安全保障理事會は、定期會議を開く。この會議においては、各理事國は、希望すれば、閣員又は特に指名する他の代表者によつて代表されることがある。

3 安全保障理事會は、その事業を最も容易にすると認めるこの機構の所在地以外の場所で、會議を開くことができる。

第二十九條 安全保障理事會は、その任務の遂行に必用と認めらる補助機關を設けることができる。

第三十條 安全保障理事會は、議長を選定する方法を含むその手續規則を採擇する。

第三十一條 安全保障理事會の理事國でない國際連加盟國又は、安全保障理事會の理事國でない國際連合加盟國は、安全保障理事會理事會に付託された問題について、理事會がこの加盟國の利害に特に影響があると認めるときはいつでも、この問題の討議に投票權なしで參加することができる。

第三十二條 安全保障理事會の理事國でない國際連合加盟國又は國際連合加盟國でない國は、安全保障理事會の審議中の紛爭の當事者であるときは、この紛爭に關する討議に投票權なしで參加するやうに勸誘されなければならない。安全保障理事會は、國際連合加盟國でない國の參加のために公正と認める條件を定める。

第六章 紛爭の平和的解決

第三十三條

1 いかなる紛爭でもその繼續が國際の平和及び安全の維持を危ふくする虞のあるものについては、その當事者は、まづ第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機關又は地域的取極の利用その他當事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。

2 安全保障理事會は、必要と認めるときは、當事者に對して、その紛爭を前記の手段によつて解決するやうに要請する。

第三十四條 安全保障理事會は、いかなる紛爭についても、國際的摩擦に導き又は紛爭を發生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛爭又は事態の繼續が國際の平和及び安全の維持を危ふくする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。

第三十五條

1 國際連合加盟國は、いかなる紛爭についても、第三十四條に掲げる性質のいかなる事態についても、安全保障理事會又は總會の注意を促すことができる。

2 國際連合加盟國でない國は、自國が當事者であるいかなる紛爭についても、この憲章に定める平和的解決の義務をこの紛爭についてあらかじめ受諾すれば、安全保障理事會又は總會の注意を促すことができる。

3 本條に基いて注意を促された事項に關する總會の手續は、第十一條および第十二條の規定に從ふものとする。

第三十六條

1 安全保障理事會は、第三十三條に掲げる性質の紛爭または同樣の性質の事態のいかなる段階においても、適當な調整の手續又は方法を勸告することができる。

2 安全保障理事會は、當事者が既に採用した紛爭解決の手續を考慮に入れなければならない。

3 本條に基いて勸告をするに當つては、安全保障理事會は、法律的紛爭が國際司法裁判所規程の規定に從ひ當事者によつて原則として同裁判所に付託しなければならないことも考慮に入れなければならない。

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