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國際連合憲章(続き)

第十三章 信託統治理事會

第八十六條

1 信託統治理事會は、次の國際連合加盟國で構成する。

a 信託統治地域の施政を行う加盟國。

b 第二十三條に名を掲げる加盟國で信託統治地域の施政を行つてゐないもの。

c 總會によつて三年の人氣で選擧されるその他の加盟國。その數は、信託統治理事會の理事國の總數を、信託統治地域の施政を行ふ國際連合加盟國とこれを行つてゐないものとの間に均分するのに必要な數とする。

2 信託統治理事會の各理事國は、理事會で自國を代表する特別の資格を有する者一人を指名しなければならない。

第八十七條 總會及びその權威の下に、信託統治理事會は、その任務の遂行に當つて次のことを行ふことができる。

a 施政權者の提出する報告を審議すること。

b 請願を受理し、且つ、施政權者と協議してこれを審査すること。

c 施政權者と協定する時期に、それぞれの信託統治地域の定期視察を行はせること。

d 信託統治協定の條項に從つて、前記の行動その他の行動をとること。

第八十八條 信託統治理事會は、各信託統治地域の住民の政治的、經濟的、社會的及び教育的進歩に關する質問書を作成しなければならない。また、總會の權限内にある各信託統治地域の施政權者は、この質問書に基いて、總會に年次報告を提出しなければならない。

第八十九條

1 信託統治理事會の各理事國は、一個の投票權を有する。

2 信託統治理事會の決定は、出席し且つ投票する理事國の過半數によつて行はれる。

第九十條

1 信託統治理事會は、議長を選定する方法を含むその手續規則を採擇する。

2 信託統治理事會は、その規則に從つて必要があるときに會合する。この規則は、理事國の過半數の要請による會議招集の規定を含まなければならない。

第九十一條 信託統治理事會は、適當な場合には、經濟社會理事會及び專門機關がそれぞれ關係してゐる事項について、兩者の援助を利用する。

第十四章 國際司法裁判所

第九十二條 國際司法裁判所は、國際連合の主要な司法機關である。この裁判所は、附屬の規程に從つて任務を行ふ。この規程は、常設國際司法裁判所規程を基礎とし、且つ、この憲章と不可分の一體をなす。

第九十三條

1 すべての國際連合加盟國は、當然に、國際司法裁判所規程の當事國となる。

2 國際連合加盟國でない國は、安全保障理事會の勸告に基いて總會が各場合に決定する條件で國際司法裁判所規程の當事國となることができる。

第九十四條

1 各國際連合加盟國は、自國が當事者であるいかなる事件においても、國際司法裁判所の裁判に從ふことを約束する。

2 事件の一方の當事者が裁判所の與へる判決に基いて自國が負ふ義務を履行しないときは、他方の當事者は、安全保障理事會に訴へることができる。理事會は、必要と認めるときは、判決を執行するために勸告をし、又はとるべき借置を決定することができる。

第九十五條 この憲章のいかなる規定も、國際連合加盟國が相互間の紛爭の解決を既に存在し又は將來締結する協定によつて他の裁判所に付託することを防げるものではない。

第九十六條

1 總會又は安全保障理事會は、いかなる法律問題についても勸告的意見を與へるやうに國際司法裁判所に要請することができる。

2 國際連合のその他の機關及び專門機關でいづれかの時に總會の許可を得るものは、また、その活動の範圍内において生ずる法律問題について裁判所の勸告的意見を要請することができる。

第十五章 事務局

第九十七條 事務局は、一人の事務總長及びこの機構が必要とする職員からなる。事務總長は、安全保障理事會の勸告に基いて總會が任命する。事務總長は、この機構の行政職員の長である。

第九十八條 事務總長は、總會、安全保障理事會、經濟社會理事會及び信託統治理事會のすべての會議において事務總長の資格で行動し、且つ、これらの機關から委託される他の任務を遂行する。事務總長は、この機構の事務について總會に年次報告を行ふ。

第九十九條 事務總長は、國際の平和及び安全の維持を脅威とすると認める事項について、安全保障理事會の注意を促すことができる。

第百條

1 事務總長及び職員は、その任務の遂行に當つて、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の當局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務總長及び職員は、この機構に對してのみ責任を負ふ國際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も愼まなければならない。

2 各國際連合加盟國は、事務總長及び職員の責任のもつぱら國際的な性質を尊重すること竝びにこれらの者が責任を果すに當つてこれらの者を左右しようとしないことを約束する。

第百一條

1 職員は、總會が設ける規則に從つて事務總長が任命する。

2 經濟社會理事會、信託統治理事會及び、必要に應じて、國際連合のその他の機關に、適當な職員を常任として配屬する。この職員は、事務局の一部をなす。

3 職員の雇用及び勤務條件の決定に當つて最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠實を確保しなければならないことである。職員をなるべく廣い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥當な考慮を拂はなければならない。

第十六章 雜則

第百二條

1 この憲章が效力を生じた後に國際連合加盟國が締結するすべての條約及びすべての國際協約は、なるべくすみやかに事務局に登錄され、且つ、事務局によつて公表されなければならない。

2 前記の條約又は國際協約で本條1の規定に從つて登錄されてゐないものの當自國は、國際連合のいかなる機關に對しても當該條約又は協定を援用することができない。

第百三條 國際連合加盟國のこの憲章に基く義務と他のいづれかの國際協定に基く義務とが抵觸するときは、この憲章に基く義務が優先する。

第百四條 この機構は、その任務の遂行及びその目的の達成のために必要な法律上の能力を各加盟國の領域において享有する。

第百五條

1 この機構は、その目的の達成に必要な特權及び免除を各加盟國の領域において享有する。

2 これと同樣に、國際連合加盟國の代表者及びこの機構の職員は、この機構に關連する自己の任務を獨立に遂行するために必要な特權及び免除を享有する。

3 總會は、本條1及び2の適用に關する細目を決定するために勸告をし、又はそのために國際連合加盟國に條約を提案することができる。

第十七章 安全保障の過渡的規定

第百六條 第四十三條に揚げる特別協定でそれによつて安全保障理事會が第四十二條に基く責任の遂行を開始することができると認めるものが效力を生ずるまでの間、千九百四十三年十月三十日にモスコーで署名された四國宣言の當事國及びフランスは、この宣言の第五項の規定に從つて、國際の平和及び安全の維持のために必要な共同行動をこの機構に代つてとるために相互に及び必要に應じて他の國際連合加盟國と協議しなければならない。

第百七條 この憲章のいかなる規定も、第二次世界戰爭中にこの憲章の署名國の敵であつた國に關する行動でその行動について責任を有する政府がこの戰爭の結果としてとり又は許可したものを無效にし、又は排除するものではない。

第十八章 改正

第百八條 この憲章の改正は、機會の構成國の三分の二の多數で採擇され、且つ、安全保障理事會のすべての常任理事會を含む國際連合加盟國の三分の二によつて各自の憲法上の手續に從つて批准された時に、すべての國際連合加盟國に對して效力を生ずる。

第百九條

1 この憲章を再審議するための國際連合加盟國の全體會議は、總會の構成國の三分二の多數及び安全保障理事會の九理事國の投票によつて決定される日及び場所で開催することができる。各國際連合加盟國は、この會議において一個の投票權を有する。

2 全體會議の三分の二の多數によつて勸告されるこの憲章の變更は、安全保障理事會のすべての常任理事國を含む國際連合加盟國の三分の二によつて各自の憲法上の手續に從つて批准された時に效力を生ずる。

3 この憲章の效力發生後の總會の第十回年次會期までに全體會議が開催されなかつた場合には、これを招集する提案を總會の第十回年次會期の議事日程に加へなければならず、全體會議は、總會の構成國の過半數及び安全保障理事會の七理事國の投票によつて決定されたときに開催しなければならない。

第十九章 批准及び署名

第百十條

1 この憲章は、署名國によつて各自の憲法條の手續に從つて批准されなければならない。

2 批准書は、アメリカ合衆國政府に寄託される。同政府は、すべての署名國及びこの機構の事務總長が任命された場合には、事務總長に對して各寄託を通告する。

3 この憲章は、中華民國、フランス、ソヴィエト社會主義共和國連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王國、アメリカ合衆國及びその他の署名國の過半數が批准書を寄託した時に效力を生ずる。批准書寄託調書は、その時にアメリカ合衆國政府が作成し、その謄本のすべての署名國に送付する。

4 この憲章の署名國で憲章が效力を生じた後に批准するものは、各自の批准書の寄託の日に國際連合の原加盟國となる。

第百十一條 この憲章は、中國語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、アメリカ合衆國政府の記錄に寄託しておく。この憲章の認證謄本は、同政府が他の署名國の政府に送付する。


以上の證據として、連合國政府の代表者は、この憲章に署名した。

千九百四十五年六月二十六日にサン・フランシスコ市で作成した。