國體護持總論
トップページ > 著書紹介 > 國體護持總論 目次 > 【第一巻】第一章 國體論と主權論 > 第四節:國體と主權

著書紹介

前頁へ

文化國體と規範國體

我が國の國體とは、前に述べたとほり、萬世一系の皇統と「やまとことのは」の言語體系を核として構成された我が國固有の惟神の古代精神と歴史、傳統から抽出される祭祀、政治、産業、經濟、宗教、道德、規範、武道、學問、藝術、技術、民俗、生活樣式などの文化の總體を意味する。

そして、この國體には、「事實」の領域に屬する「文化」といふ存在(Sein)の側面(文化國體)と、「規範」の領域に屬する「古道(ふるみち)」といふ當爲(Sollen)の側面(規範國體)とがあつて、兩者は、等價値的な對極事象にある。振動的平衡を保つ關係にある。即ち、「かくある文化」と「かくあるべき古道」との兩面があり、このうち、國法學、國體學で取り扱ふ領域としては、規範的側面である「古道」であり、これを「規範國體」と呼稱することとし、その規範性の源泉となる文化事實の側面である「文化國體」とに區別し、以下においては、特に、斷りがない限り、國體とはこの「規範國體」を意味するものとする。

しかし、文化國體と規範國體とを、法實證主義、とりわけ純粹法學のやうに分離して認識するものではなく、兩者を、前に述べた振動的平衡の關係にあるものとして認識することは當然である。

ところで、國體は、日本だけに限らず、「傳統」を持つ全ての國家に存在し、概ね、理念的要素によつて形成されてゐるが、これに權力的要素を含むか否かは、その國の傳統によつて決されるのである。

続きを読む