國體護持總論
トップページ > 著書紹介 > 國體護持總論 目次 > 【第三巻】第三章 皇室典範と憲法 > 第四節:占領典範の無效性

著書紹介

前頁へ

無效理由その一 皇室の自治と自律の干犯

占領典範は、皇室の自治權、自律權を侵害して全面的に否定するものであつて、規範國體に牴觸するものであるから無效である。

祖先から代々に亘つて家の名跡を承繼することは、古來からの國體規範である。「名跡」のうち、「名」とは、家名、家業、家産などの物質的なものであり、「跡」とは、家訓、家法、家學、家風などの文化的、精神的なものである。「國」は「家」のフラクタル相似象であることから「國家」といふのであつて、家の制度は、國家の基軸である。また、私家(臣と民の家)は皇家(皇室)の相似象であるから、皇家の家法は、國家の眞柱である。

その眞柱の皇家に自治と自律がないことは、國家に自治と自律がないこと、すなはち獨立を失ふことの相似象である。中心の空洞化は、全體の虚無性をもたらすのである。

明治以降に成文法整備がなされた際、古代ローマ法などの制度を借用受繼した系譜においても、「法は家庭に入らず」といふ法諺(法律格言)で顯された法理があり、これは我が國の規範國體と一致するために受け入れられた。これは、家族内のことは、國法と矛盾しない限度において自治と自律を認め、法が立ち入らないとする法理であり、公法である『刑法』においても、親族間の犯罪では刑の免除を行ふなどの親族相盜例(第二百四十四條など)が規定されてゐるのである。

このやうに、家(家庭、家族)が國家との關係で自治と自律が認められるのは、國家が國際社會(組織)において獨立を認められることと相似するからである。

占領典範は、歴史的に考察すれば、前に指摘したとほり、德川幕府による皇室不敬の元凶である『禁中竝公家諸法度』と同じ性質のものである。つまり、占領典範とは、現代版の『禁中竝公家諸法度』ないしは『禁裏御所御定八箇條』とも云ふべき皇室彈壓法である。

明治典範では、諮詢機關として「皇族會議」があり、「成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織」されてゐるが(第五十五條)、占領典範では、皇族會議を廢止して皇家の自治と自律を奪つた上、決議機關として「皇室會議」を設置し、その議員は、「議員は、皇族二人、衆議院及び參議院の議長及び副議長、内閣總理大臣、宮内廳の長竝びに最高裁判所の長たる裁判官及びその他の裁判官一人」の十人(第二十八條)とし、皇族議員は十人中二人に過ぎない。これによつて皇室から自治と自律を奪ふ内容となつてゐるのである。これは「皇室會議」ではなく、「皇室統制會議」なのである。

從つて、このやうな規範國體に含まれる皇家の自治と自律を否定した占領典範は無效なのである。

続きを読む