國體護持總論
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無效理由その六 占領典範自體の無效性

占領典範は、占領憲法が制定された昭和二十一年十一月三日の約二か月後の翌二十二年一月十六日に制定され、占領憲法が施行された昭和二十二年五月三日と同日に施行された。そして、明治典範は、昭和二十二年五月一日の『皇室典範及皇室典範增補廢止ノ件』により翌日(五月二日)限り廢止され、また、帝國憲法は、さらにその翌日である同年五月三日に施行された占領憲法によつて改正されたものとされてゐる。

しかし、假に、さうであるとしても、占領典範と占領憲法とは、施行時の昭和二十二年五月三日までは施行前の状態であつて、法規としては發效してゐないことになる。より詳細に云へば、占領憲法が制定された昭和二十一年十一月三日の時點において、現に效力を有してゐる國務(政務)に關する最高法規(根本規範)は帝國憲法であるから、この帝國憲法に牴觸する占領憲法は制定時の時點において既に無效であると判斷されるのと同樣に、占領典範が制定された昭和二十二年一月十六日の時點において、現に效力を有してゐる宮務に關する最高法規(根本規範)は明治典範であるから、この明治典範に牴觸する占領典範は制定時の時點において既に無效であるといふことになるのである。

そして、制定時に既に無效であつた法規が、その法規が形式的に豫定してゐた施行時になると、突然に有效となるといふやうな奇妙な法理は存在し得ないのであるから、占領憲法が無效であるのと同樣に占領典範もまた無效である。ましてや、占領典範は、施行前の占領憲法の授權を受けた法律として制定されたものであることからすると、親龜が轉けたら子龜も轉けるといふ意味で、無效の占領憲法の授權による占領典範の制定行爲もまた當然に無效であることになる。

このやうに、制定行爲自體がその當時も效力を有してゐる明治典範に牴觸して無效であつた占領典範は、公布とその後の施行といふ形式的措置を經由したとしても、そのことによつて實質的な意味で占領典範が有效となるとするだけの根據と理由が全く見出しえない。また、このやうな場合、法形式においても、少なくとも新たに追認的な立法措置がなされなければならないが、これまでそのやうな立法的措置も存在しないので、占領典範が有效となるはずもない。尤も、占領典範は追認をなしえない絶對無效の立法行爲であるから、假に追認しても無效なものは無效であることは前述したとほりである。

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