國體護持總論
トップページ > 著書紹介 > 國體護持總論 目次 > 【第三巻】第三章 皇室典範と憲法 > 第四節:占領典範の無效性

著書紹介

前頁へ

無效理由その五 廢止禁止規定違反

このやうにして明治典範は廢止されたとするのであるが、これまでの法論理的な無效理由に加へて、明治典範の廢止は、明治典範の條規に違反するが故に無效であるとする點がさらに重要である。

すなはち、明治典範第六十二條は、「改正」と「增補」のみを許諾する規定であり、全面的な「廢止」をすることは許されないと解されるからである。つまり、明治典範第六十二條には、「將來此ノ典範ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ敕定スヘシ」とあり、さらに、帝國憲法第七十四條には、「皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス」と定められてゐたのであつて、同じ法源として改正、變更することは認められてゐるが、これらの全部を廢止することは禁止されてゐた。にもかかはらず、明治典範を全面的に廢止したことは、これらの規定に明らかに違反してゐることになる。

「皇室典範ハ單純ナル皇室内部ノ家法ニ非ス」とする前述の清水博士の見解のとほり、確かに正統典範には、帝國憲法と渾一融和すべき國家的な性格があるため、帝國憲法にも正統典範に關する規定が存在してゐる。しかし、だからと言つて、皇室の自律權などを全面的に否定する「廢止」は、皇室の家法(皇室の自治)の完全否定であり、規範國體の破壞行爲であることは明白である。

続きを読む