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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第百五十四回 帝国憲法の現存証明 その四

ななそまり むをちのすめの いつくしき のりしろしめす とこしへのみよ
(七十餘六條の皇國の稜威奇しき法(大日本帝國憲法)知ろし召す永代の御代)


⑭ 昭和26年9月8日  サンフランシスコ講和条約(桑港条約)調印。


さて、巷では、帝国憲法が占領憲法に改正されて、その占領憲法下でサンフランシスコ講和条約(桑港条約)を締結し、その発効によつて我が国は独立したとされてゐます。


しかし、これは、どんでもない嘘なのです。


GHQの占領政策とその意向を従順に承継した我が国の従米傀儡政府は、我が国が桑港条約を締結した根拠を占領憲法第73条第3号であると説明します。


占領憲法第73条は、次のやうな条文です。


  「第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
     一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
     二 外交関係を処理すること。
     三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
     四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
     五 予算を作成して国会に提出すること。
     六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることはできない。
     七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。」

しかし、第3号の「条約を締結すること」といふのは、一般条約のことであり、講和条約は含まれません。占領憲法では、講和条約を締結する権限はないのです。

もともと、占領憲法が成立したときは、非独立国ですから、講和・独立してからの一般条約の締結権限しかないのです。


その理由は単純なことです。帝国憲法第13条(戦争大権)により大東亜戦争が始まり、それがポツダム宣言の受諾と降伏文書の調印によつて、休戦となり、占領政策が始まつたのですから、その最終講和は、帝国憲法第13条でなければできないのです。


最終講和になるまでは「戦争状態」でした。桑港条約が発効する昭和27年4月28日まで我が国と連合国とは「戦争状態」だつたのです。


桑港条約の第1条には、かうあります。

   (a)日本国と各連合国との間の戦争状態は、第二十三条の定めるところによりこの条約が日本国と当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。
   (b)連合国は、日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。

つまり、桑港条約は、大東亜戦争の最終講和条約であり、これにより我が国は独立を回復したのですから、これを締結するには、戦争大権(戦争権限)がなくてはならないのです。帝国憲法には、第13条に、「天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス」とあり、宣戦から最終講和に至るまでのすべての戦争行為を統括する戦争権限と、その他の条約大権を規定してゐますので、我が国が最終講和を行ふのは、帝国憲法第13条によらなければなりません。なほ、広義の戦争大権は、統帥大権(帝国憲法第11条)をも含めます。


この戦争大権(戦争権限)は、アメリカ合衆国連邦憲法の定める「War power」(戦争権限)と同一のものです。マッカーサーは、マッカーサー草案を作成するに際して、「The right of belligerency」、つまり、戦ふ権限といふ概念(交戦権)といふ初めての言葉を使ひましたが、これは「War power」と同じです。しかし、自衛戦争を口実にした戦争すらできないとの意味で、「The right of belligerency」といふ用語を用ゐたのです。


これをそのまま受け入れたのが占領憲法第9条第2項後段の規定です。


占領憲法は、正式には、「THE CONSTITUTION OF JAPAN」といふ名称です。これを邦訳として「日本国憲法」と仮称しただけです。


占領開始時に、初めに出されたマッカーサー指令は、占領期において使用する公用語を英語とするといふものでした。

つまり、公用語は英語であり、邦文は、占領が終はるまで公用語ではなくなりました。


GHQの指令により、昭和21年4月4日から昭和27年4月28日の独立回復まで「英文官報」(英語版官報)が発行され、ここで発表されたものが正式文書なのです。


占領憲法についても、英文官報に発表された「THE CONSTITUTION OF JAPAN」が正式なもので、邦文の「日本国憲法」なるものの翻訳は、正式なものではないのです。


たとへば、「THE CONSTITUTION OF JAPAN」の第1条は、

  Article 1.
    The Emperor shall be the symbol of the State and of the unity of the people, deriving his position from the will of the people with whom resides sovereign power.

といふものですが、これが邦文訳では、

  第一条
    天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

となつてゐます。

しかし、「日本国民の総意」は誤訳であり、「the will of the people」(人民の意志)です。日本国民の総意ではなく、日本に居住する外国人を含めた「人民」(people)の多数決による意志決定によつて天皇の地位が決まると書いてあるのです。「総意」といふのは、単純な多数決による意志決定なのです。


つまり、

  Article 10.
    The conditions necessary for being a Japanese national shall be determined by law.

を翻訳したのが、

  第十条
   日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

ですので、日本国民とは、「Japanese national」と表現されてゐますので、「people」を「日本国民」と訳すことはできないのです。


閑話休題。


ともあれ、「The right of belligerency」について定めた第9条は、次のとほりです。

    Article 9.
      Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.
     In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea, and air forces, as well as other war potential, will never be maintained. The right of belligerency of the state will not be recognized.

 この邦文訳が、
  第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
       前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

といふことになります。


ここに、はつきりと、「The right of belligerency」とあり、これを便宜的な交戦権と訳してゐますが、この交戦権は、まさに「War power」(戦争権限、戦争大権)のことです。


ですから、占領憲法第73条第3号に、内閣が「条約を締結すること」の権限があるとしても、同第9条で交戦権を否定されてゐるために、講和条約を締結して「戦争状態」を終結させる権限は、占領憲法には存在しないことになります。


占領体制を擁護する学者や官僚、政治家は、この「The right of belligerency」を「交戦国の権利」であるとの詭弁を弄しますが、交戦国の権利といふのは、「The right of belligerent」ですから、明らかに異なります。すり替えも甚だしいものがあります。


自衛戦争といふ「交戦」もまた禁止されてゐるのであり、自衛権は自然権であるとしたところで、自衛戦争は明らかに交戦権の行使であつて、禁止されてゐるのです。


占領憲法が憲法であれば、自衛隊は、「land, sea, and air forces, as well as other war potential」(陸海空その他の戦力)に該当し、当然に違憲です。

正式公文は、「その他の戦力」ではなく、「as well as other war potential」であり、戦力とは断言できないとしても、その潜在的な能力までが否定されてゐますので、近代戦争を遂行する能力のある自衛隊は、「forces」(軍隊)であり、少なくとも「war potential」(潜在的戦争遂行能力組織)であることに間違いはないのです。


占領憲法を憲法だと言ひ張つて、これまで詭弁を弄して解釈改憲を推し進め、さらに、その解釈改憲を事後追認するために占領憲法の改正論に邁進する大嘘つきの皆さん!

この論理と現実に目を背けてはなりません。


我々は、桑港条約を締結し、その発効によつて戦争状態を終結させたのは、帝国憲法であつて、少なくともそのときまで帝国憲法は現存してゐたために、我が国は独立できたのです。帝国憲法が現存してゐなければ、我が国は独立できなかつたのです。

南出喜久治(令和2年9月1日記す)


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