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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第百六十回 飽和絶滅の危機 その四

ほやのきが はげしくしげる そのはてに さくらほろびて ともにつひゆる
(ほやの木(宿り木)が激しく茂るその果てに桜(宿主)滅びて共に潰ゆる)


日本銀行の正体は不可解です。


昭和17年に公布された旧・日本銀行法(昭和17年法律第67号)が平成9年に、現行の日本銀行法に全部改正されたのですが、日本銀行の性質は、特別の認可法人です。


日本銀行の資本金は1億円で、その55%が政府から、45%が民間からの出資となつてゐますが(日本銀行法第8条)、日本銀行の出資証券は、民間に向けて出資証券を発行し、これまでの秘密主義ではなくなつたものの、それでも不可思議な性質があります。


昭和17年の旧・日本銀行法で、日銀は形式的には国有化したのですが、3年後の敗戦によつて日本国家は政治的にはGHQの支配下となり、日銀は、大正2年に創設されたFRBを支配する国際オロチの支配下になります。


また、フランスでも、昭和20年にフランス銀行は国有化され、翌昭和21年に、イギリスでもイングランド銀行が国有化されますが、これらも実質的には国際オロチの支配下で存在してゐます。


そして、第一次世界大戦のヴェルサイユ条約で、ドイツから賠償金を取り立てるためにモルガン商会によつて設立された賠償委員会から発展した組織として、昭和5年に結成された国際決済銀行(BIS)が、世界の中央銀行を統括する地位を得て、国際オロチの支配下に置かれることになります。これは、審議の内容が一切公開されない秘密結社です。


さらに、昭和19年7月のブレトンウッズ協定によつて、FRBの発行するドルのみが金と換金できることとなり、ドルが基軸通貨となることが確立します。そして、私企業であるFRBは、国際オロチの傀儡となつて、世界の金融・財政・通貨発行を完全に支配することになつたのです。


わが国で通用してゐる通貨は、日本銀行が発行する日本銀行券といふ「銀行券」であり、政府発行の「日本政府券」ではありません。「(日本)銀行券」なのであつて、「日本(銀行)券」ではないのに、「日本券」と錯覚させられてゐる「非国家の企業」の銀行券なのです。それを国家の通貨(法貨)であると、「パブロフの犬」のやうに信じさせられてゐるだけです。

政府発行通貨を発行することは可能ですが、それは事実上できなくなつてゐるのです。


つまり、日本銀行が通貨発行権を独占してゐることになりますが、その株主権に等しい出資権の45%を民間が保有してゐるといふことに強烈な違和感があるのです。


しかし、これは、通貨の闇の一つですが、深層の闇は、その通貨発行権の帰属自体についてです。


欧州において、国家と私企業の銀行団との間で、通貨発行権の帰属を巡る歴史があつたことについては、『國體護持総論』第六章(改訂版)で述べたとほりです。


要するに、国家は、銀行団によつて通貨発行権を奪はれてしまつたのです。そして、それが英国の植民地であるアメリカにまで及んだことから、そのことが契機となつて、アメリカの独立戦争が始まります。

そして、アメリカは独立し、通貨発行権を独立国のものとして、アメリカ合衆国憲法が制定されます。


西暦1787年9月17日に作成され、西暦1788年に発効したアメリカ合衆国憲法の第8 条(連邦議会の立法権限)の第5項では、

「貨幣を鋳造し、その価格および外国貨幣の価格を規制する権限、ならびに度量衝の基準を定める権限」

を定めたのです。


これこそが独立国の本質なのです。


もちろん、国家主権を構成する要素は、これだけではありません。

軍事、外交、国家統治機構などがありますが、金融・財政に関しては、租税徴収権と通貨発行権が必須の要素です。


勿論、イギリスから独立したアメリカも、その憲法第8条第1項に、

「連邦議会は、つぎの権限を有する。合衆国の債務を弁済し、共同の防衛および一般の福祉に備 えるために、租税、関税、輸入税および消費税を賦課し、徴収する権限。但し、すべての関税、輸入税お よび消費税は、合衆国全土で均一でなければならない。」

と定めてをり、欧州諸国でもこの租税徴収権があることは共通してゐます。


わが国は、江戸末期において、欧米の侵略から独立を保ち、明治になつて大日本帝国憲法を制定し、租税徴収権については、第62条などで規定しましたが、通貨発行権については、それが奪はれたままの欧州の憲法を範としたため、通貨発行権を憲法条項として定めませんでした。


欧州とアメリカとが通貨発行権を巡つて独立戦争にまでなりましたが、アメリカは、その後、南北戦争によつて国家存亡の危機に陥り、財政破綻を避けるため、通貨発行権を現在のFRB(Federal Reserve Board 連邦準備制度理事会)といふ「私企業」に奪はれて、現在に至るも、憲法違反状態が長く続いてゐるのです。


そのために、世界は、「中央銀行」だと僭称する「私企業」に通貨発行権を与へてゐる(奪はれてゐる)のが国際慣例となつてゐたことから、帝国憲法もまた、アメリカ合衆国憲法第8 条第5項の通貨発行権条項を取り入れることがなかつたのです。


もし、アメリカ合衆国憲法の成立過程をも精査して帝国憲法を起草してゐたのであれば、このことに気づいた筈ですが、欧州気触れの明治政府では、そこまで思ひが至らなかつたといふことであり、これは、痛恨の極みです。


しかし、わが国でも、その後になつて、通貨発行権を憲法事項として国家が取り戻すことができる好機がありました。


皮肉なことに、それは、大東亜戦争停戦後のGHQ占領期に、昭和21年2月13日に我が政府に交付された制定指令(GHQ草案、マッカーサー草案)の中にありました。


その第76条には、

「租税ヲ徴シ金銭ヲ借入レ資金ヲ使用シ並ニ硬貨及通貨ヲ発行シ及其ノ価格ヲ規整スル権限ハ国会ヲ通シテ行使セラルヘシ」

とあり、
さらに、第77条には、

「国会ノ行為ニ依リ又ハ国会ノ定ムル条件ニ依ルニアラサレハ新タニ租税ヲ課シ又ハ現行ノ租税ヲ変更スルコトヲ得ス
 此ノ憲法発布ノ時ニ於テ効力ヲ有スル一切租税ハ現行ノ規則カ国会ニ依リ変更セラルルマテ引キ続キ現行ノ規則ニ従ヒ徴集セラルヘシ」

とあつたのです。


第76条は通貨発行権を、第77条は租税徴収権を定めてゐます。


これは、アメリカ合衆国憲法が定めてゐる通貨発行権と租税徴収権であり、これが、国家の金融・財政における基本的かつ必須となる国家主権の要素であることを意味してゐるからです。


ところが、占領憲法では、通貨発行権の文言は削除され、次のやうに定められました。


第83条には、

「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」

そして、第84条には、

「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」

とあり、通貨発行の文言は消されました。


これはどうしてでせうか。


アメリカの南北戦争によつて、その漁夫の利を得たのは、国際オロチです。といふことは、アメリカの独立戦争を仕掛けたのは国際オロチであるとの推論が成り立ちます。


南北戦争後の西暦1862年に、リンカーン(Abraham Lincoln)は、アメリカ政府(財務省)の政府紙幣であるグリーンバックスドル(Greenbacks dollar)を発行し、欧州銀行複合体(国際オロチ)の支配からの脱却を図らうとしました。これは、中央銀行が発行するドルではなく、アメリカにおける初めての憲法通貨(法貨、Constitutioal Money)でした。そして、これにより1865年に、リンカーンは暗殺されるのです。


そのことからして、占領憲法制定において、アメリカ政府と国際オロチとが激突する事項は、この通貨発行権の帰属に関する明文規定でした。占領憲法の制定(帝国憲法改正)の審議過程において、これを削除させる国際オロチの圧力が強烈に働いたためとしか考へられません。


しかし、通貨発行権を国家が取り戻すことは可能です。

そして、わが国だけでなく、世界各国が、まづは、この通貨発行権を国際オロチから自国に取り戻し、国際オロチを退治すれば、世界は飽和絶滅の危機から救はれることになります。


スサノヲノミコトの世界的復権です。

南出喜久治(令和2年12月1日記す)


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