國體護持總論
トップページ > 著書紹介 > 國體護持總論 目次 > 【第三巻】第三章 皇室典範と憲法 > 第五節:占領憲法の無效性

著書紹介

前頁へ

無效理由その九 詔敕違反

帝國憲法は欽定憲法であるから、告文、憲法發布敕語及び上諭といふ帝國憲法發布に際しての詔敕についても憲法典と同樣に憲法規範を構成することになる。

「みことのり(御事詞、御言宣)」には、祭儀における神前での宣命(せんみゃう)、告文(かうもん)、御誓文(ごせいもん)と、臣民に下される詔(みことのり)、敕諭(ちょくゆ)、上諭(じゃうゆ)、敕令(ちょくれい)など種類があり、事の性質と輕重、内容などによつて各樣に區別されてゐるが、これらを總稱して「詔敕」といふ。

そして、帝國憲法の本文の前には、「告文」、「憲法發布敕語」、「上諭」の順で「詔敕」が置かれてゐる。その憲法發布敕語には「不磨ノ大典」とあり、さらに上諭には「將來若此ノ憲法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ」とあることから、これは、帝國憲法改正に關する形式的要件である第七十三條とは別個に、改正のための實質的要件を定めたものと解釋しうる。即ち、その實質的要件は「紛更ヲ試ミルコト」を禁止したことであるから、占領憲法の制定といふ方法による改正は「紛更」そのものに該當するので無效である。

また、明治典範には、「宜ク遺訓ヲ明徴ニシ皇家ノ成典ヲ制立シ以テ丕基ヲ永遠ニ鞏固ニスヘシ」とあるので、これに明らかに反した占領典範は、そもそも典範の名に値しないものであつて無效である。

「天皇といへども國體の下にある」ことから、「紛更」が明らかな占領憲法と、皇室家法の「丕基」を破壞した占領典範とは、いづれも天皇による公布がなされたといへども完全に無效であることに變はりはない。當今の一天皇に國體を變更できる權限はない。從つて、先帝陛下の上諭による公布があつたことだけを根據とする「承詔必謹」論を以て、憲法として有效であるとする見解は、後に述べるとほり、帝國憲法第七十六條第一項の解釋を誤つた反國體的見解である。

続きを読む