國體護持總論
トップページ > 著書紹介 > 國體護持總論 目次 > 【第五巻】第五章 復元措置と統治原理 > 第一節:復元への道のり

著書紹介

前頁へ

規範國體の復元力と祖國防衞權

では、復元の妥當性を根據付ける原動力となるのは何か。それは、規範國體の持つ復元力である。

規範國體が一時的に停止されてゐたとしても、その復元力によつて再び規範國體が復元する。このやうな事例は、神話に煙る悠遠の昔から今日までの我が國の歴史において決して希有なことではなかつた。たとへば、占領憲法は、律令時代における公地公民制(班田收受制)に相似し、また、占領典範は、いはば江戸時代における『禁中竝公家諸法度』と『禁裏御所御定八箇條』に比肩されるからである。つまり、班田收受制については三世一身法(723+660)と墾田永代私財の法(751+660)で完全に崩壞するまでに百五年間、『禁中竝公家諸法度』と『禁裏御所御定八箇條』については寛永六年(1794+660)に光格天皇によつて尊皇討幕の綸旨の民に下されるまで約百八十年間の歳月を要したものの、我が國體の持つ復元力によつて淘汰されてきたからである。

このやうに、我が國體からして「異體」又は「奇胎」の法制度は國體護持の妨げとなる危機ではあるが、國體の復元力によつて早晩破棄されて再生しうる。しかし、最大の危機は、むしろ、畏き邊りからの崩壞であり、その空洞化、虚無化である。外患に對する防衞措置も當然必要であるが、それ以上の危機的な内憂に立ち向かはなければならない。

そして、この規範國體の復元力に基づく臣民の名譽ある義務と崇高な權利が、前に述べた祖國防衞權(國體防衞權)である。民族の保存維持本能に忠實な方向へ向かひ、繼體の君を奉じて犬馬の勞を惜しまない忠烈の臣となる道が開かれてゐることを意味する。この祖國防衞權の呼稱は、三島由紀夫の「祖國防衞隊」に由來する。これは國體防衞を意味するが、これには勿論、文化や規範の全體的な防衞のみならず、祖國を構成する個々の臣民の生命、財産なども防衞の對象とし、なによりも「祖國」の言葉の中に「復元」の想ひが含まれてゐるからである。

祖國防衞權の根據は、規範國體にあり、帝國憲法第二十條の「兵役の義務」(國防の義務)は、これを注意的に規定するものであつて、明治二十三年十月三十日の『教育ニ關スル敕語』(教育敕語)にも「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」とある。さらに、明治二十七年八月七日の『義勇兵ヲ停メ給フ敕諭』には、「非常徴發ノ場合ヲ除クノ外」は義勇兵(祖國防衞軍)の必要がないとするのであり、その反對解釋として、非常事態時(國家緊急時)においては義勇軍を創設し、國家に仇なす者を實力で排除することは認められるのである。ここに祖國防衞權の存在理由があり、いまは正にその行使の時期である。

続きを読む