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連載:千座の置き戸(ちくらのおきど)【続・祭祀の道】編

第百六十五回 飽和絶滅の危機 その九

ほやのきが はげしくしげる そのはてに さくらほろびて ともにつひゆる
(ほやの木(宿り木)が激しく茂るその果てに桜(宿主)滅びて共に潰ゆる)


 今、世界で開発競争が繰り広げられてゐる武漢ウイルスの予防ワクチンは、安全なのか、また、有効なのか、そして、死に至るアナフィラキシーショックなどの副作用はどんな人に起こるのか、などなど、これらの期待と不安と疑心が入り乱れてゐる状況にあります。


ワクチン利権を推進する手先となつてゐる学者や医師などが、ワクチンが完成すれば劇的に感染症が克服できるといふフェイクが蔓延し、世界各国でワクチン開発競争が繰り広げられる中で、中共(シノバック)やロシア(スプートニクV、スプートニク・ライト)などのワクチンは危険で、欧米のワクチン(英のアストロゼネカ製、米のファイザー製、モデルナ製、独のビオンテック製)などは安全といふやうな偏見に満ちた論調で誤魔化す者が出てきましたが、そんな簡単なことで片付けられる問題ではありません。


確かに、中共やロシアは、情報、言論及び思想について権力的な統制と弾圧がなされてゐる独裁的国家なので、ワクチンの安全性や有効性に関する権力側からの情報は基本的に信用できるものではなく、検証や再現性が担保されてゐないので、情報の正確性に疑問があるのは当然です。

また、中共は、武漢封鎖に至るまでの3週間の間、真実を隠蔽して感染症対策を遅らせ、世界にパンデミックを広げたことを認めて謝罪することなく開き直り、むしろ、それを奇貨として、マスク外交やワクチン外交などで、一帯一路といふ覇権構想を推進する全体主義国家なので、発信されるワクチン情報は殆どが虚偽と言つても過言ではありません。

また、欧米は、それほど酷くはないとしても、そのワクチンについては虚偽がないとは到底言へないのです。どの国のワクチンも目くそ鼻くそです。


武漢ウイルスのワクチン開発が着手されたのは、第一波が押し寄せた令和2年の春以後のことで、夏場の僅かな数ヶ月の期間で完成されたものです。しかし、ワクチン開発が数ヶ月では到底出来ないのです。

それは、生ワクチンであらうが、不活化ワクチンであらうが、また、それ以外のウイルスベクターワクチン、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、DNAワクチン、組み換へたんぱく質ワクチン、組み換へウイルス様粒子(VLP)ワクチンなどのワクチン製造方法の違ひによつて変化するものではありません。開発期間にはある程度の差はあつても、治験に要する期間についてはほとんど違ひがないものなのです。


ワクチンに限らず、医薬品が開発されて承認されるまでに、通常は2~3年程度の時間がどうして必要かと言へば、ワクチンに限らず、そのやうな医薬品が承認されるためには、厳格な手続と方法で非臨床試験が繰り返されて、さらに数回の臨床試験によつて効果効能の治験データに基づき、安全性や有効性の証明がなされることを必要とするから、当然なのです。


このことについて、わが国の厚生労働省が平成22年5月27日付けで発出した「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン」(非臨床試験ガイドライン)及び「感染症予防ワクチンの臨床試験ガイドライン」(臨床試験ガイドライン)に従つて具体的に説明してみることにします。


非臨床試験といふのは、以前は前臨床試験と言つて、臨床試験の段階に入るまでの前段階としての動物実験や試験管内試験を意味してゐましたが、いまでは、臨床試験の前後において、同時進行的に行はれることから非臨床試験と呼んでゐます。


非臨床試験の段階で様々な試験がなされますが、まづ、反復投与毒性試験については、「通常1種の動物を用いて実施する。」としてゐます。


この1種の動物といふのは、「動物の愛護及び管理に関する法律」第10条に定める動物の意味で、「哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもので、畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用その他政令で定める用途に供するために飼養し、又は保管しているものを除く。」とあります。


動物実験に用ゐられてゐるのは、マウスやラットが一番多く、イヌ、モルモット、ウサギなどは例外的で、いづれにしても小動物に限られてゐるのが現状です。人間に近い大型動物である牛、馬、豚などは用ゐられてゐませんので、人体への影響の有無についての近似した詳細なデータを収集することは到底不可能な状況なのです。


わが国では、戦前の731部隊の研究成果をすべてアメリカが撤収され、戦後は、BC兵器開発の基点となる獣医学部の新設と増設が厳しく規制されてきました。

ところが、金正男の毒殺事件などから、北朝鮮のBC兵器開発が進んでゐることを重視したアメリカは、BC兵器のディフェンスをわが国にも協力させるために、50年以上禁止されてきた獣医学部の新設と増設を許可して、それを実施させることになりました。ところが、それが加計学園問題といふスキャンダル事件として翻弄されてしまつたのです。与党は、その真相を語れなかつたし、野党は、これを指摘することによつてBC兵器防衛を強化する方向になれば不都合だとして、国益を無視した党利党略によつて全与野党がこの重要な問題を隠し通してきたのです。


BC兵器の開発と防衛とは紙一重のものですが、そのためには、獣医学部の研究を充実させ、大型哺乳類による治験が不可欠なのです。


ともあれ、小型哺乳類によつて非臨床実験(動物実験)を行ふのであれば、その試験データを以て人体に影響があるか否かを判断するのは相当に慎重かつ精密に行ふ必要があります。


ところが、非臨床試験ガイドラインによると、生殖発生毒性試験については、「受胎能及び着床までの初期胚発生に関する評価は、頒布投与毒性試験における病理組織学的検査で生殖機器への影響が懸念される場合に必要である。」として、「影響が懸念される場合」の判断は、ワクチン開発者に丸投げしてゐます。


むしろ、マウスやラットなどであれば、実験対象の動物に繁殖を続けさせて次世代への追跡調査が可能ですが、それを行はずに恣意的に「影響が懸念」されないと判断される可能性があるのです。


子宮頸がんワクチンでは、特定承認の前提として、このやうな治験を免除した上、不妊化傾向のある治験資料があるにもかかはらず、これに全く疑問を抱かずに承認してしてしまつたのです。特定承認といふのは、ガイドラインの手続をほどんど省略して、外国製のワクチンを国内で使用するやうに認めることです。

しかも、将来においてワクチン禍が起こつてもワクチン提供者の責任を政府が肩代はりして一切を免責する特別法も制定してゐます。これは、今回のワクチンに限らず、インフルエンザワクチンも子宮頸がんワクチンなどについても、特例承認する場合は、薬害の責任を免責した上で契約を締結します。とんでもない話です。


また、遺伝毒性試験やがん原性試験は「必要としない」とされてゐます。ウイルス自体は、人の遺伝子に影響を及ぼすものですが、それを予防するために接種させるワクチンには、遺伝毒性試験もがん原性試験も不要だとするのです。

つまり、遺伝子への悪影響や発がんの危険があつても、承認されるのです。


こんな程度のお粗末な非臨床試験が済めば、次に臨床試験に進みます。


前にも述べましたが、治験薬等の薬効を調べる臨床試験として「二重盲検法」のいふ方法が採用されてゐますが、これは、投薬の人体実験対象となる被験者を2つのグループに分け、一方(接種者群)には治験用薬を、他方(非接種者群)には偽薬(プラシーボ)を与へ、いづれも治験用薬を投薬したと説明して、誰に治験用薬を投与したかを知らせずに、その薬効を調査分析する方法です。

しかし、拙速に開発と承認がなされた海外のワクチンは、果たしてこれが厳格かつ公正になされたとは到底思はれません。


接種者群と非接種者群のそれぞれの人数はどのくらいか。接種者群と非接種者群の振り分け分布が公正か。治験期間はどのくらいか。

また、人種、民族、宗教などによる生活習慣の相違を踏まへてゐるか(臨床試験ガイドラインでも、「外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因」を重視している。)。

さらに、性別、年齢、健康状態(被治験者のフレイル率)などの分布が接種者群と非接種者群とで均等か。そして、人種、民族、宗教などによる生活習慣の相違毎に分類して治験すべきではないのか。

非接種者群に偽薬を与へると言つても、ワクチンが筋肉注射であることから、偽薬としてどんな成分の偽薬を筋肉注射するのか。それによる免疫等への影響はないのか。

接種者と非接種者に対する治験における説明は全く同じなのか。非接種者に偽薬であること気付かせさせる可能性はないのか(これがあればプラシーボ効果はなくなる)。

治験期間が短期であれば、正確な数値は期待できないのではないか。接種後の生活を観察できてゐるのか。

ワクチンの保存方法について、常温管理のものや超冷凍管理のものなど様々で、特に超低温のものは、それを解凍後に成分が変化したり毒性が生じることがないのか。

ウイルスは常に変異し続けるので、変異前に対応したワクチンが変異後のウイルスに効果があるとするエビデンスがあるのか。


などなどの様々な疑問があります。

また、季節性のウイルスである可能性を否定できないので、夏場だけの極短い治験結果では正確なものとは思はれないのです。


有効率を高くするためには、極端に言へば、接種群を頑強な者だけにし、非接種群にフレイルのみを集めるといふ恣意的な対応が出来るのです。

そもそも、ワクチンの有効率(発症予防効果)といふのは、前記の厚労省の「臨床試験ガイドライン」にも次のやうに説明してゐます。


「ワクチンの発症予防効果は、ワクチンの非接種者群における罹患率に対する接種者群における罹患率の低下率で表され、直接的な防御(すなわち、抽出したワクチン接種群中でのワクチン接種による防御)で評価される。ワクチンの発症予防効果(Vaccine(protective)Efficacy(VE))は、一般に以下の式で評価される。
 VE=(Iu-Iv)/Iu×100%=(1-Iv/Iu)×100%=(1-RR)×100%
 Iu =ワクチン非接種群における発症率
 Iv =ワクチン接種群における発症率
 RR=相対危険度=リスク比(ケースコントロール研究(症例対照研究)或いは他の研究で、対象疾患或いは有害事象の頻度が低い場合はオッズ比に置き換える)」


これは、WHOワクチンの立証評価に関するガイドラインと同じです。

つまり、接種者群と非接種者群とがそれぞれ1000人として、非接種者のうちの発症者が100人(Iu=0.1)、接種者のうちの発症者が10人(Iv=0.01)とすると、有効率は90%となるのです。

決して、90%の確率で予防効果があるといふものではありません。


ところで、臨床試験は、第Ⅰ相試験(小規模試験)、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験(大規模試験)といふ段階を経ますが、具体的な方法や要件は示されてゐません。

特に、第Ⅲ相試験では、「適切な対照群を設定した無作為化二重盲検比較試験が望ましい。」とされ、適切な二重盲検法でなくてもよいとしてゐることは驚きです。


このやうに、厚労省のガイドラインは、安全性に関する配慮が手薄であり、有効性に関することに前のめりになつてゐます。しかも、「発症者の定義」が重要であるとするだけで、その基準すら定めてゐません。さうであれば、「発症予防効果」を計測するについて、発症の定義を恣意的に定めれば、有効率も変動します。


この臨床試験ガイダンスでは、「発症予防」の概念の説明として、「病原性微生物の感染による病気の発症を防ぐこと、広くは重症化の防止、症状の軽減化の意味も含む。」としてゐますが、これでは、海外のワクチンの有効率がどの基準の定義によるものかが不明なのです。


そもそも、武漢ウイルスのワクチンは、発症予防効果はなく、重症化予防効果があるとされてゐるのに、発症予防効果が高いとする説明は、決して正確なものではありません。


ましてや、海外のワクチンでは、変異種に効果があることのエビデンスは示されてゐません。65歳以上の治験データがなく、その効果が証明されてゐないものもあります(アストロゼネカ製)。効くか効かないかの明確なエビデンスもなく、ましてや、安全性についての説明はなく、ガイドラインによれば、その詳細な説明責任もありません。


これまで、安全性に関する説明も、有効性に関する説明もなく、初めに接種ありきで前のめりになつて、ワクチンの供給契約をして接種計画を立てるなど言語道断です。


ワクチンを接種して、副作用とか、アナフィラキシーショックが起こるのは、人体にとつてワクチンといふ毒物が注入されるためなのです。毒物だからアナフィラキシーショックや副作用が起こるのです。武漢ウイルスに自然感染し、死亡したり重症化する人には、アナフィラキシーショックは起こりません。


それが急性の副作用ではないとしても、人体に異物と毒物が滞留して慢性的に人体を犯し、ギランバレー症候群などの疾患等の原因になる危険があるにもかかはらず、建前では、安全性が証明されることを接種の前提であるとしながら、これまで一度も安全性についての政府の詳細な説明がなく、疑問に答へる公聴会も開かないまま、早々と欧米のワクチンを購入する契約を締結し、そのワクチンの接種を奨励して接種することの「努力義務」を課すといふのは、到底許されることではありません。

南出喜久治(令和3年2月15日記す)


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